斬新な「芸者ブーツ」を考案 Asatoさん

ファッションデザイナー

 ニューヨーク在住のファッション・デザイナー、Asatoこと北村元統(きたむら・あさと)さん(29)は、幼少期より、母・祖母・叔母といった女性たちの手仕事や感性に囲まれ、感情と造形が結びつく環境で育った。家の中には常に着物や仏具などがあり、思春期の自己の確立の中での家族との確執や葛藤を乗り越えてきた。2014年に上京し、東京モード学園でファッションを学び、17年にはロンドンへ渡り、MICHIKO KOSHINOでのデザイン経験や、パリでの研修を通して国際的な感覚を養った。

 18年からはニューヨークを拠点に、3.1 Phillip Lim や MELITTA BAUMEISTER などでデザイナーとして経験を積み、22年、パーソンズ大学院プログラムを修了後に自身の名を冠したブランド 「ASATO」 をニューヨークで立ち上げた。ブランドは「人間の不完全さに美を見出す」という哲学に据え、孤独や不安にそっと寄り添うような「感情の装置」としての衣服を提案している。ニューヨーク・ファッション・ウィークでのランウェイショーにも参加するなど若手デザイナーとして頭角を見せている。

 そんな彼が日本の下駄をイメージして作ったのが歯のあるブーツ、名付けて「芸者ブーツ」だ。重心のかけ具合で前の歯が外れる難点を素材の工夫で克服してファッションショーでもフットライトを浴びる。

 「私は今、ニューヨークを拠点にしながらも、日本人であることの意味と恩恵を日々感じています。だからこそ、ファッションを通じて、日本の伝統産業や職人技、そして精神性の美しさを、世界に向けて『売れる形』で伝えることに挑戦していきたいですね」と語る。石川県出身。

 (三浦良一記者、写真も)