小児病院と地域社会へ
アートセラピスト
ニューヨークでアートセラピストとして活動するアーティストの久徳裕子さんが、このほどハーレムの小児病院で職場を共にする同僚のポートレートを手がけた。ハーレムの125丁目と3番街に設置された特設壁画コーナーにその絵はある。作品のモデルは25年間病院で働く同僚のセラピスト、シンシアさん。彼女とは母娘と呼び合う関係で働き始めた時から仲良くさせてもらい、深い尊敬と感謝の気持ちから作品のモチーフに選んだという。
大学に通っていた時から壁画制作に関わることを目標、夢の一つにしていたという久徳さん。「壁画はコミュニティーのためのアートで、普通の絵画とは違う目的があり、コミュニティーの一部になるアートを制作することに喜びがあります」と話す。アートセラピストとしてハーレムの小児病院で働き始めて今年で3年になる。久徳さんにとってハーレムはセラピスト、また人間的に成長、育ててもらった大切な思い入れのある場所になった。
今回の壁画は、アップタウン・グランド・セントラルとグランド・スケール壁画計画の主催で、2年前に応募して審査を受けて制作した。高さ3メートル四方ほどの与えられたスペースにアクリル絵の具で1日で描きあげたという。展示は2年間の期限付き。「取り壊されても人々の心に刻まれ、そしてその時代や社会を映す。ハーレムの文化やダイナミックさ、そしてその美しさを作品で表現して、リフトアップ、もっと街を元気にしようと思いました」と制作の意図を話す。
「モデルの彼女の頭に沢山の花を描いたのはこれから更にハーレムという地区が美しく素晴らしく繁栄、咲き誇るよう、そして、そこに働く人達に対しての賛辞と尊敬も含めているんです」と笑顔で語る。10月18日に作品が完成した時に、シンシアさんのご主人が背広姿で壁画の前で家族写真を撮影して喜んでくれたそうだ。数々の展覧会で賞を獲得してきた久徳さんのアートで社会の絆を作る活動はこれからも続きそうだ。
(三浦良一記者、写真も)
(写真)小児病院の同僚、シンシアさんをモデルにした壁画の前に立つ久徳さん(ハーレムの125丁目と3番街の交差点で10月27日)

