屈指のシェフを日本から招へい

 昨年春、ニューヨークのアッパーイーストサイドに開いた「スシ・ノズ」は、ミシュラン一つ星をはじめ定評高い江戸前寿司店だ。オーナーシェフの阿部望氏はニューヨークの「寿司田」での料理長の仕事を含め、過去19年間寿司を握り続けてきた。店内は京都の職人による数寄屋造りの純和風。阿部氏のお任せコースは伝統江戸前にこだわりつつも、時には米国の要素をさりげなく織り込み、独自の魅力を発している。
 その阿部氏が共同オーナーのデイヴィッド&ジョシュア・フキエ兄弟とともに半年前から始めた企画が、この街に優れた日本の料理人の仕事を紹介する「ジャパン・シリーズ」。これまでミシュラン三つ星の東京の「虎白」、二つ星の北海道の「料理屋素」などの精鋭シェフを招き、阿部氏とコラボのディナーを開催している。
 ジョシュア氏は「和食の伝統をこの店で提供できる以上の形で伝えたい。北海道から九州まで全国からお招きする各シェフには、地元産食材をお持ちいただいています。日本の風土の豊かさをニューヨーカーに知っていただければうれしい」と話す。
 6月に招かれた北九州の「照寿司」の渡邉貴義氏は、氏曰く「プリンのようになめらかな食感」の赤ウニや、3週間特殊な技術で熟成させたクエほか、稀な地元の伝統食材を駆使しながら、寿司文化を独自のスタイルで紹介。例えば最上級大トロにはおろし玉ねぎを添えて肉のような大胆な旨味を創出するなど、新たな寿司を提案して和食通のお客の好評を博した。
「自分自身がもっと勉強したいと同時に従業員のスキルアップや刺激にもなると思ってこの企画を始めました。今後は寿司や懐石だけではなく、日本のフレンチや中華などのシェフにも声をかけていきたいと思っています」と阿部氏。
 米国の伝統和食への理解が深まる昨今、一歩踏み込んだ同店のユニークな試みは、和食ファンの幅をますます広げていきそうだ。(ニューヨーク在住ジャーナリスト/片山晶子)

SUSHI NOZ
181 E. 78th St. (bet. 3rd & Lex. Aves)
Tel: 917-338-1792
おまかせディナーのみ
The Hinoki Counter 18:00 と21:00
The Ash Room 18:15 と 20:45
日曜定休
www.sushinoz.com (ジャパンシリーズの予約はウェブサイトのReservationから)