トランプ大統領によるイラン戦争は「勝利なき戦い」の色を増しています。欧州の動きが世界への影響力を高めています。
①ハンガリーの総選挙で、オルバン長期独裁政権が大惨敗。盟友トランプ氏の異例の支援も逆効果。ベルリンの壁の崩壊やプラハの春に匹敵する歴史的事件との論調も。行政機関、メディア、選挙制度への統制などトランプ・オルバン両氏に共通する政治手法の否定。
②初の米国人のローマ教皇レオ14世による「平和を求め、戦争を否定せよ」との発言に対するトランプ氏の批判に対して、米国のカトリック教諸団体のトランプ氏離反が拡大。
③トランプ氏の盟友イタリアのメローニ首相も、トランプ氏によるローマ教皇批判を拒否し、イランへの米軍作戦への基地提供を拒否。
④スペインのサンチェス首相が「国際的合意なしの行動は正当化できない」と、最も明確に対イラン戦争に反対。
これらは、英独仏や国連、EU、NATO首脳も含め、イスラエルに追随した米国のイラン攻撃には大義がないとの共通認識です。1980年のイラン・イラク戦争、1991年の湾岸戦争、2003年の対イラク戦争という3度の米国主導戦争の失敗の教訓が欧州には根強く残ります。
国際法重視、多国間主義、外交解決、人道主義、宗教的・道徳的価値などの欧州が唱える大義が、グローバルサウス諸国などへの説得力も増しています。
米国内での関税戦争や交戦権に関する大統領権限の行使に対する違憲訴訟や、バンス副大統領、軍、国務省、CIAなどの反対論を押し切ってのトランプ氏の開戦に反対するNo King 運動などにも呼応していると思われます。
英国のチャールズ国王が今週訪米しました。昨年10月に教皇レオ14世を訪問し、カトリック教会と500年ぶりの和解を実現し、カナダなど15国の国王でもあります。トランプ氏と欧州の関係が険悪化している中での貴重なソフト外交です。今回の戦争を、よもや第3次世界大戦などに拡大させてはならぬとの欧州の総力戦です。
他方、日本の高市早苗首相は、トランプ氏の戦争に「法的評価を控える」としています。国民生活を打撃しているエネルギーを依存し、長年友好関係にあるイランなど中東諸国の人命も尊重することが国際社会と日本にとっての大義です。国際法や人道重視の外交こそ、分断化する世界における日本の国益と思います。
ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会理事、岐阜女子大特別客員教授も兼任。

