ロシアで進むワクチン開発

英医学誌が一定のお墨付き

 英医学誌ランセットは4日、ロシアが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、臨床試験の参加者全員が抗体を獲得したとする論文を掲載した。論文は開発に携わったロシアの研究者らが書いたものだが、世界的権威のあるランセットの査読を通り掲載されたことで大きく信頼性を得ることになった。

 論文は6〜8月にロシアの二つの病院で実施された臨床試験を報告したもの。18〜60歳の男女76人を対象にワクチンを投与した結果、全員が抗体を獲得した。一部で頭痛や関節痛はあったものの深刻な副作用は見られなかったという。ワクチン開発を支援している政府系ファンド「ロシア直接投資基金(RDIF)」のキリル・ドミトリエフ総裁は記者会見で「高い安全性と効果を証明し、国際的にロシアの研究者が認められたことを示した」と述べた。

支援している。

 プーチン大統領がワクチン開発を最優先課題にしているロシアでは、8月に世界で初めて自国で開発したワクチンを許可した。ワクチンは保健省が後押ししモスクワの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所がロシア国防省と協力して開発、1957年にソ連が成功させた世界初の人工衛星と同じ「スプートニクV」と名付けられた。プーチン大統領は発表記者会見で、自身の娘も臨床試験に参加し特に副作用なく抗体を獲得したと語った。

 ワクチン開発は各国の研究機関がしのぎを削っているが、あまりに早い開発・承認に、欧米のみならずロシアの臨床研究組織協会が承認延期を求めるなどロシア国内からも安全性や有効性を疑問視する見方が出た。

 今回の論文を受けて欧米の研究者の間では、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のノアル・バージーブ博士が「この研究はうまくいっているようだ」との見方を示すなど開発が順調に進んでいることは認めているものの、市場に出すにはまだ時間が必要になるとの見方が一般的だ。論文でも、ワクチンの安全性は高いとしているが有効性についてはさらなる研究が必要とし、フェーズ3(第三段階)のボランティアによる臨床試験はさまざまな年齢とリスクグループを入れ4万人規模で行うとしている。

 新型コロナの感染者が9月1日に100万人を超えるなど世界で4番目に多い。ミハイル・ムラシュコ保健相は、重症化のリスクが高い人を中心にワクチン接種を11月か12月から開始すると述べるなどロシア政府は前のめりだ。