「女性が活躍できる社会へ」

NY日系人会ビジネスウーマンの会

岡島さん日本の現状語る

 NY日系人会ビジネスウーマンの会主催「ガラスの天井を突き破れ 日本女子サッカー界、変革への挑戦を語る」と題した講演会が7日夕、NY日系人会ホールにて開催された。講師は、女子プロサッカー「WE(Women Empower-ment)」リーグの初代チェア(理事)を務めた岡島喜久子氏。

 岡島氏は、2021年に始まった日本初の女子プロサッカーリーグで初代チェアに抜擢。ジェンダー平等を目指すリーグの社会的意義を知ってもらおうと、2年4か月にわたり尽力した。この日、岡島氏はジェンダー平等実現のため「ガラスの天井を破る」ことが試された日本女子サッカー界、変革への挑戦や現状を語った。

 まずは岡島氏自身のキャリアやチェアになった経緯、WEリーグについて、その取り組みなどをリーグ公式アンセム映像なども使って説明。女子サッカーを通じて、 多様性にあふれた社会の実現・発展に貢献することを理念に掲げた同リーグで行ったさまざまな試みを話した。まずは多様性を大切にし、メンズと呼んでいた選手たち(女性が好きな女性選手)にジェンダーの話をしたり、男性コーチにもLGBTQ+の教育をした。「改革は一人だけではできないが、逆境を改善するために女性を応援してくれる男性を見つけることが大切。理解をしてくれる男性たちには助けられた」と当時の苦労を語った。また、女性が活躍できる社会についても言及し、日米の女性に配慮した働き方を提供する企業の取り組みについても解説した。

 会場にはNY在住でボクシング世界チャンピオンの吉田実代さんも来場。サッカーと同様にこれまでは男性のスポーツとされてきたボクシングを続けることの大変さを乗り越え、アメリカでチャンピオンになったことや、自分の受けた差別や偏見は女子サッカーにも通じるところがあり、そこに果敢に立ち向かった岡島氏の取り組みを賞賛した。

 講演後の質疑応答では、「スペインでは政府が女子スポーツを奨励する法律を作り、国をあげて取り組んでいるように、日本の関係者にも話を持ち込んでいるとのことだが日本での可能性は?」との質問に「すごく時間がかかると思う。今の既得権益にとらわれていて、それを変えることは大変。取り組んではいるが道はとても遠いと思う。ただ、成果は出ている」と述べた。

東京のアトリエ保存活動

イサム・ノグチや高村光太郎も滞在

NYの邦人にも署名呼びかけ

 イサム・ノグチや高村光太郎などが使った、東京都中野区にあるアトリエが老朽化して、都内の劇作家や有志がこのアトリエの保存運動に乗り出している。この建物は、昭和23年(1948年)に、日本の水彩画の父と言われた中西利雄が東京中野区の桃園町(旧名)に建てたもので、日本の近代建築運動のリーダーであった山口文象が手がけた。画家の中西利雄は、完成間近に病気を患い48歳の若さで亡くなった。息子の中西利一郎さんが建物を守ってきたが、昨年1月に亡くなった。木造で築70年以上経っており修復が必要で、中野区も動きはじめて、近く中野区長もアトリエを訪問するという。(写真上:東京都中野区に残るアトリエ(藤島宇内撮影))

 そのあと、このアトリエはさまざまな芸術家に貸し出され、特に世界的に有名なイサム・ノグチや高村光太郎がいる。イサム・ノグチは1950年から1952年まで、高村光太郎は1952年10月から1956年4月2日に亡くなるまで3年半に亘りここで過ごした。彼の代表作である青森県十和田湖畔に建つ「乙女の像」の塑像もこのアトリエで製作された。


イサム・ノグチ

Isamu Noguchi, 1988. Photo: Heinz-Gunter Mebusch. The Noguchi Museum Archives, 06415. © The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, NY / Artists Rights Society (ARS)


 保存運動をしている中西利雄・高村光太郎アトリエを保存する会の代表、渡辺えりさん(劇作家・俳優)は「日本の優れた美術家、彫刻家、建築家、詩人などが関わったこのアトリエは、日本の貴重な文化遺産です。ぜひ後世に残してほしいと思います。活用方法については、中西利雄、高村光太郎の作品展や若い芸術家へのアトリエ提供、朗読会など工夫次第でさまざまあると思う」と話す。これらを実現するため、保存会では区議会や関係機関に保存の要望書を提出するため多くの賛同者の署名を求めている。イサム・ノグチも滞在したことがあることから、ゆかりのあるニューヨークからの署名を呼びかけたいと、保存会はこのほどニューヨーク日本人美術家協会(JAANY、松田常葉会長)に署名を呼びかけた。JAANYも会員の署名を集める方向で準備を進める予定だ。保存会ではニューヨーク在住の一般読者からの署名も歓迎するとしている。署名活動に関する問い合わせは曽我貢誠さんEメール[email protected]または小山弘明さんEメール [email protected] 

「日本人永住者増やして」

NYで人材紹介会社経営の邦人ビジネスマン

駐日米国大使に嘆願書提出

 このままでは、米国の日本人が消滅してしまう。それは米国経済にとってもマイナスになる。打開策として米国永住権の日本人枠を増やして欲しいーそんな嘆願書をニューヨークで人材紹介・派遣会社を営む日本人がラーム・エマニュエル駐日米国大使に出した。提出したのは5月21日。

 内容は「現在の日本人人口に関する入手可能な情報に基づき、添付の請願書を作成した次第である。日本から米国への、そして米国内への移民の不均衡を是正するために、賢明な判断と迅速な行動を強く奨励する」というもの。

 差出人はニューヨークに本社のある株式会社インテレッセ・インターナショナルの経営者、藤原正人さん(66)。藤原さんが、日本人の労働人口がパンデミック以来急速に萎んでいることに危機感を覚え、過去に遡って在米日本人人口の推移と他のアジア系諸国との人口動向を調べてみて愕然とした。10年に一度国勢調査(センサス)で日本国籍を持つ米国永住者の高齢化が進んでおり、このままでは先細りになっていくことがわかった。

 藤原さんによると「現代の日本人は移民としてアメリカに来るケースは稀である。かつては専門職対象のH1-Bビザの取得により、その後のグリーンカード申請による永住権取得、その中から米国市民権を取得する構図となっていた。この構図がリーマン・ショック後に著しく変化し、H1-Bビザ取得が極めて困難になってきた。このため第一弾の母集団であるH1-Bが著しく減少し、米国市民権取得そのもの件数も大幅に減少していることは容易に想像できる。アメリカに在住する代表的なアジア系住民の中で日本人の高齢化は著しく進んでいる。センサス 2020で比較すると60歳以上の日本人住民は日本人住民全体の36・95%を占めており、第2位の韓国系住民の22・45%を大きく引き離している。アジア系住民で60歳以上の住民が最少のインド系住民の比率は12・04%であり、日本人住民のそれと比較して3倍以上となっている。加えて、センサスのデータにはアメリカに在住する日本語が可能なすべての日本人の統計となっており、この中には日本国籍者で数年間のみ滞在する日系企業の駐在員、学生、報道関係者、在外公館員、日本の政府外郭団体職員などとその家族も含まれている。この人々の殆どが60歳未満である。日本の外務省の海外在留邦人数調査統計報告によると、2020年度のアメリカ在住の長期滞在者合計は21万1110人(2020年10月1日時点)。この数値をセンサス2020のデータから差し引いた母集団を元に再計算すると、60歳以上の日本人の比率は49・11%に上昇する。この数値はすでに人口減少による日本人社会の消滅が間近いことを示している。多様な民族文化・価値観の存在が認められているアメリカにおいて、日本文化・習慣の継承・継続の点においても極めて困難な状態に直面していると言える。結論として、今すぐにでも米国内の移民の不均衡の是正が必要である。日米両国は自由、民主主義、人権の尊重といった基本的価値観を共有している。また、アジア太平洋地域では依然として不安定性・不確実性が増しており、パートナー国である日本の米国内日本人住民の存在は重要であることを踏まえると、この著しい人口減少は友好な日米間関係にも支障をきたす可能性を秘めている」としている。

(写真)藤原さん

古本不動産50周年祝う

日系社会と共に半世紀
後継者タミコさん披露

 古本不動産の創業50周年を祝うパーティーが7日夜、日本クラブで開催され120人の招待客が集い半世紀にわたる同社と創業者である古本武司さんと妻キャロルさんを祝福した。佐藤貢司ニューヨーク日系人会(JAA)会長が司会を務め、中垣顕實法師の祝鐘、ゲイリー森脇JAA名誉会長の音頭で祝杯をあげた。スーザン大沼元JAA会長がジェームス・テデスコ・バーゲン郡エクゼクティブ、シェリー・B・マイヤー上院議員からの祝辞を代読し、河手哲雄北米三菱商事会社社長、遠藤彰ニューヨーク日本総領事館首席領事が祝辞を述べた。

 古本氏は第二次世界大戦中に日系人の強制収容所で生まれ、少年時代を父親の故郷である広島市で過ごし、ベトナム戦争時には米軍兵として出兵した経歴を持つ。退役後、ニュージャージー州フォートリー地区で古本不動産を創業、以後日系二世の地元の名士として日系人の地位向上のため活動を続けている。同氏は、ニューヨーク広島会名誉会長として、また人権活動家としての各種活動を通じ、ニューヨーク州及びニュージャージー州における日系人社会の地位向上及び日本・アメリカ合衆国間の相互理解の促進、友好親善に寄与してきたとして2022年に令和4年春の叙勲で旭日単光章を受章している。

 当日は、同社の後継者としてタミコ・オオオカさんが正式に紹介された。資産管理の仕事をしていたタミコさんが、古本氏の父親・清人さんが戦前ロサンゼルスで働いていた会社の創業者、大岡菊夫氏の孫だったことが近年になって偶然分かり、74年ぶりの再会を果たし、後継者探しをしていた古本社長が、親の代のビジネスパートナーの再来としてタミコさんを後継者にすることを決めたのだという。

 タミコさんの父親、正明さんも古本さんとは別のマンザナの日系人強制収容所の体験者で、日系写真家、宮武東洋(故人)が収容所内で撮影した有名な鉄杖網を掴む日系3少年の写真に映る一人。その実話をタミコさんの姉、アケミさんが3少年再会のドキュメンタリーを映画化、その作品が2022年、エミー賞の一つである第51回北カリフォルニア地域エミー賞のニュース・短編部門で最優秀賞を受賞している。タミコさんは、ニューヨーク地区では僧太鼓の主要メンバーとしても活躍中だ。祝賀会にはロサンゼルスで医師をしている古本さんの実姉、泰子さんもお祝いに駆けつけ、戦時中に過ごした日系人強制収容所での子供時代の思い出などを語った。

 古本さんは戦時日系収容に反対したフレッド・コレマツ氏(故人)の遺志を継いでニュージャージー州のフレッドコレマツデーの祝日制定にも尽力するなど人権活動家としても知られる。祝賀会の最後に古本氏と深い親交があったマウント富士レストランの創業者・藤田徳明氏(故人)の長女、ナンシー・フジタさん、親族を代表してケン・オカジマさん、キース・サキムラさん、リンダ・カワグチさんがそれぞれ挨拶し、思い出を語った。閉会の挨拶では長男のスコット・フルモトさんが来場者に感謝の言葉を述べた。

(写真)前列左側から5、6番目が古本夫妻、前列右側2人目がタミコさん、左隣が父・正明さん(7日、日本クラブで)

戸田恵子「虹のかけら」

カーネギーホールで25、27日

ジュディ・ガーランドの人生代役兼付き人の視点で描く

 女優の戸田恵子が25日(火)と27日(木)午後8時からカーネギーホールで、一人舞台「虹のかけら」(フジ・サンケイ・コミュニケーションズ、FCI主催)を上演する。映画「オズの魔法使い」で全世界のアイドルとなった天性のミュージカルスター、ジュディ・ガーランドの人生を、代役兼付き人として支えた同名のジュディ・シルバーマンという1人の女性の視点から描いたオリジナルストーリーだ。

 この作品は、戸田の還暦の記念に演出家の三谷幸喜氏が書き下ろしたもので、初演は2018年5月。パンデミックを挟んで5年ぶりの上演となる。プロットや歌う曲目などは日本とほぼ同じだが、音楽の殿堂カーネギーホール用に芝居を幾分コンサート寄りにリメイク、日本版を少しシンプルにしたニューヨーク・バージョンとなる。ステージは日本語で、字幕なしの舞台となる。(写真右:東京公演の様子(撮影・宮川舞子))

 三谷氏とは、彼の初映画監督作品「ラヂオの時間」以来数々の舞台やテレビドラマなどで仕事を共にしてきた仲だけに、還暦記念の作品にどんな内容のものを作ってくれるのか、戸田さんからリクエストしたのは「著名な歌える人の生きざまを歌と芝居で伝える、人生も面白い人の話はどうか」ということだけ。三谷氏からジュディ・ガーランドで彼女の一生を語れる話を作ろうと言われ、迷わず「面白いと思いました。ストレートに表現するのではなく、三谷さんらしい一捻りがあって。三谷さんの作品にはいつも胸がキュンとなるところがあって、今回の作品でも彼女が苦しんだところも臆せずに描かれていて、まるで1本の映画を見たような気分になれる作品です。リラックスして気楽に楽しんでいただける作品です。ニューヨークの皆さん、どうぞ見にいらしてください」と話している。会場はワイル・リサイタルホール(西57丁目154番地)入場料80ドルから。チケットは電話212・247・7800、

carnegiehall.org 劇場窓口のボックスオフィス。

とだ・けいこ=子役として芸能界入りし、16歳で上京。1974年に演歌歌手「あゆ朱美」としてデビュー、77年に「劇団薔薇座」に入団し、同劇団の看板女優として活躍。声優としても活動し、「機動戦士ガンダム」(79)のマチルダ・アジャン、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎(85〜88)や「それいけ!アンパンマン」(88〜)のアンパンマンなどで広く知られる。主な出演作に、映画『ラヂオの時間』、ドラマ『遺留捜査』シリーズ、舞台『なにわバタフライ』『歌わせたい男たち』など。

ミュージカルの本場で生き抜く情熱

ブロードウエー俳優

由水 南さん

 実家は代々加賀友禅の伝統工芸家で、二代・由水十久の娘として石川県金沢市で生まれた。アートに対する両親の理解もあり、小学生の時にバレエスクールで東京の帝国劇場で「回転木馬」を見た時に、踊りだけでなく歌って演技もあるミュージカルというものを初めて知った。テレビの衛星中継で「ライオンキング」のトニー賞の発表を見て「こんな素敵な世界があるんだ」と魅了された。地元高校時代はバレエ、演劇、合唱、そして英会話を掛け持ちでやって高校卒業後に渡米し、ニュージャージー州立大学を経て、ニューヨークの演劇学校、アメリカン・ミュージカル&ドラマティック・アカデミー(AMDA)を卒業後、全米各地の劇場で「メリー・ポピンズ」「アイーダ」「キャッツ」など、多数の舞台に出演した。

 日本では、劇団四季で「ウィキッド」「美女と野獣」「鹿鳴館」に出演し、日本初演の「春のめざめ」では、翻訳家・演出助手としても携わる。再渡米後の2015年、渡辺謙主演の「王様と私」でブロードウエーデビューを果たし、その後も「ミス・サイゴン」「マイ・フェア・レディ」でブロードウエー出演を続ける。「マイ・フェア・レディ」では、アジア人の女性俳優として唯一の出演者に選ばれ、俳優陣のリーダー役であるダンスキャプテンも務めた。 舞台俳優として活動してから20年、週に8回のステージをこなし、一人22役、男役も女役もできる万能俳優として活躍してきた由水さんだが、出だしは決して順風満帆ではなかった。オーディションを受けること88回目にしてやっと初仕事を手にし、ブロードウエーの舞台に立つのにさらに10年の歳月を要した。小さな落胆と希望の連続の中で常に心がけたことはオーディションの記録を日記としてつけたこと。場慣れして体験を積むことがまずはオーディションを受ける目的だったので、全てが勉強と経験だった。現在は、俳優活動と並行して、2014年に『YU-project』を発足し、セミナーや講演会を通して「可能性は無限大」のメッセージをニューヨークから世界に発信している。昨年、初の著書『今日から始めるSHOW UPの習慣』(イマジカインフォス)を出版し活動の幅を広げている。

 今年4月に故郷石川県に戻り北陸で開催されたガルガンチュア音楽祭の司会を務め、被災地で「上を向いて歩こう」などを歌った。10月には再び一時帰国して「いしかわ舞台芸術祭」に参加する。「能登は長期的な支援が必要で、私なりにでもできる支援をしていきたい」という気持ちで遠い母国を思う。 (三浦良一記者、写真も)

Website: https://www.yu-project.org/

吉田実代選手講演会

Alto日本語補習校で19日

 ニューヨーク・ミッドタウンにあるAlto日本語補習校は、19日(水)午後2時から(開場は1時30分)ボクシング世界チャンピオンの吉田実代さんを招いて講演会を行う。「夢を実現させる3つの秘訣」という題で、世界王者の座に輝く吉田さんの軌跡をもとに講演が行われる。世界の頂点を目指して勝ち取った方の話を聞くのは大変貴重な機会だ。1年半前にニューヨークへ移住した吉田さんのことを知った同校のスタッフが、ぜひ大人にも子どもにも聞いてほしいと思い立って開催が決定した。当日は吉田さんからエクササイズの紹介も予定されており、参加者が実践する機会もある。親子での参加はもちろん、スタッフによる誘導対応が行われるので子どもだけの参加も可能。遠方に住む人に向けて、オンラインの参加も受け入れている。会場はレキシントン街370番地1804号。

 参加費は大人30ドル、子ども無料。オンライン参加は1家庭30ドル。事前申し込制。申し込み・詳細は同校ウェブサイトhttps://alto-edu.comを参照する。

何をやっても怒られません

和田秀樹・著

青春新書・刊

 日本は、会社勤めの勤労者なら、60歳という一般的な定年制度があり、その後5年間は、同じ会社の名刺を使いながら、役職が取れた配置転換などの中で「元は私◯◯にいまして」という前置詞がついての名刺交換になり、対外的には大手企業社員であった本人と家族のプライドが保たれ、会社は人件費を安く抑えることができる。双方のニーズがうまく合致したいかにも日本的なウィンウィンなシステムだが、定年前に役職のない人の場合は結局、「そのまま同じ仕事をしていて給料が半分になった」という「残念」な気持ちを抱くことも少なくないようだし、元部下が上司となって主従逆転するシステムもなんだかストレスが溜まりそうだ。

 そんな中でも、定年退職したら、夫婦で世界一周の海外旅行に行きたいとか、若い頃に乗りたかったけれど乗れなかった大型バイクの免許を取得して日本全国気ままなツーリングに行きたいとか、趣味の釣りやゴルフを存分に楽しみたいとか、憧れだったポルシェを買いたいとか夢のような希望は、誰でも心の中でうっすらとは持っている。

 アメリカに住んでいる本紙の読者は、転勤で3、4年一時滞在している駐在員や似たようなカテゴリーの企業派遣留学生は別として、大体が永住者か米国籍を取得した日本語が分かる元日本人ということになるので、日本の定年制度は関係ない。そもそもアメリカには定年制度がないので、勤め人は年齢による解雇、差別ははなから受けないので、「老後の楽しみ」という概念が日本とは少し異なるのではないだろうか。

 米国では、66歳と半年が過ぎれば、長年働いて税金さえ払っていれば、積み立ててきたソーシャル・セキュリティー(米国年金)が正確に毎月銀行に振り込まれ、勤労者のシニアライフは、経済的には案外と恵まれていて、リタイアメントも漠然とした老後であり、日本のように「はい今日から会社勤めは終わり、長年ご苦労様でした」というような環境にはない。本書は、当たり前の話だが、日本にいる日本人を読者対象に長年高齢者精神医療に携わってきた和田秀樹さんが書いた本で、以前に『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ・刊)でも似たような書評を書いた覚えがあるが、どうせ死ぬという突き放した極限の意識を持たないまでも、要は「やりたいことがあったら、後回しにせずに、50代のうちにその準備をして定年退職後に備えなさい」という内容の本だ。

 人生100年と言われ、周りを見渡せば、若々しいご年配の人たちが多い。アメリカで長く生活していると、リタイアメントの線引きがはっきりしていないだけに「気がついたら60超えてるわ」、「およよ、もうすぐ70だわ」「うーん実は80代なの」という人がゴロゴロいる。人間は天邪鬼な生き物なので、希望が叶うことになった瞬間に、その希望は輝きを失うことがままある。ポルシェに乗りたいという夢が叶うお金を手にした瞬間に「今買わなくてもいいか、それより」となることがあり関係のないことに使ってしまったりする。なので、配偶者から怒られているうちが「華」と思って、またお一人様人生の人は心おきなく、好き勝手に生きることが、健康にもプラスだというようなことが書かれている。(三浦)

【編集後記】

【編集後記】



みなさん、こんにちは。ニューヨーク日系人会(JAA)の第54回奨学金授与式が5月31日にハーバードクラブで行われ、今年の秋から米国の大学に進学する若者14人に総額7万8000ドルの奨学金が贈られました。当日のゲストスピーカーには日本の高校時代に学年のビリから1年間で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格し、この夏、2年間留学したコロンビア大学大学院をオールAで修了した小林さやかさんが、勉強することで得る人生の喜びについて講演しました。今週号5面で掲載しています。それによると、小林さんは、これまで500回以上の講演に招かれて体験談を語っているそうで、コロンビア大学大学院で2年間過ごして感じたことは、日本の社会が、若者にとって自信を持てない社会であることだそうです。教師も親も生徒や自分の子供を、謙遜したつもりで人前で「うちの子なんて」と他人に卑下して話したりすることがあるが、それがどれほど子供本人の心を傷つけるか大人は知るべきだと。ニューヨークは真逆で誰もが自信にみなぎっていると。「頑張ればできるという挑戦の精神を持って、達成感を味わうことこそが、本当の幸せ、ハピネスである」とも述べていました。確かにお金も自由もないのは現実問題としては辛いですが、お金と自由があっても、何もすることがないのはきっともっと辛いかもしれません。小林さんのように難関大学を見事突破した時の達成感、幸せ感は相当なものだったと思います。受験も今は昔、試験とは縁遠くなってしまった人も、身近な好きなことで何か目標を設定さえできれば、他人と比較する必要のないセルフハピネスを手に入れられるかもしれませんね。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年6月8日号)

(1)トランプ氏有罪の背景と影響  1面と4面

(2)ハリソン笑顔で日本祭り大盛況  1面

(3)「進撃の巨人」10月NY上演 チケット発売開始  3面

(4)オーバーツーリズム批判と文化摩擦  4面

(5)第54回JAA奨学金 新大学生14人に授与  5面

(6)TOKYOの今を売る  STUDIOUS  TOKYO   7面

(7)源吉兆庵五番街店オープン 洋風新商品も  8面

(8)中川直人の9.11 作品「森の星たち」語る  10面

(9)つげ義春の妻が描いた絵日記  11面 BOOKS

(10)訪米武士の子孫NYでジャズ歌手 大久保真理さん  19面

トランプ氏有罪の背景と影響

大統領選前提の評決

 トランプ前米大統領が不倫の口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審は5月30日に有罪評決を下した。これを受けて量刑を決める審理が7月11日に行われる。トランプ氏は31日、記者会見し、「不正な裁判」であり「口止め料ではなく秘密保持契約だった。完全に合法で、誰でもやる一般的なものだ」と改めて無罪を主張、控訴する意向を示した。

 一方、バイデン大統領は31日、「法の上に立つ者はいないという米国の原則が再確認された。評決が気に入らないからといって、不正だと言うのは無謀であり、危険で無責任だ」と述べた。

 ニューヨーク州の場合、業務記録改ざんの量刑は最高で4年とされている。多くの法律関係者が、トランプ氏のような過去に犯罪歴がなく、業務記録改ざんの罪で起訴された人物が刑務所に送られることは極めて珍しく、罰金刑などがより一般的だとしている。しかしホアン・マーシャン裁判長が量刑を決めるにあたり、2016年の選挙との関係を踏まえた業務記録改ざんの重大性を考慮するのではと言われている。

 トランプ氏は刑事事件で有罪評決を受けた、米国史上初の大統領経験者となったが、米国の憲法の大統領選の立候補の条件に犯罪歴による制限はなく、有罪になっても出馬できることから11月の大統領選に向けて立候補は継続する。トランプ氏とバイデン氏が合意した6月27日開催の第1回大統領候補者討論会も予定通り行われるものと見られる。

 事実上の一騎打ちとなる11月の大統領選に向けて、トランプ氏とバイデン氏の支持率は拮抗している。リアルクリアポリテックスが算出している5月10日から31日までの9つの世論調査平均では、トランプ氏46・9%、バイデン46・3%でその差0・6%。ケネディ、スタイン、ウエスト候補を入れた場合でトランプ41・9%、バイデン39・7%とその差2・2%。評決前のABCの世論調査では、トランプ支持者のうち有罪であれば4%が支持をやめる、16%が考えると回答しており、裁判が与える影響は無視できない状況だ。

 トランプ氏に対するダメージは大きいと見られるものの、トランプ陣営によれば評決からの24時間でオンラインでの小口献金が5280万ドル(約83億円)に達したという。またその3分の1が新規参加者だという。有罪評決が支持者の結束を強めている格好だ。

  軽犯罪か重犯罪か

 

 トランプ氏は2016年大統領選挙期間中、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏(2018年に税法違反や詐欺、選挙資金法違反などで有罪となり3年間服役。刑期は終了)を介してポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に不倫の口止め料として13万ドルを支払った。口止め料だったことを隠すため、トランプ氏が業務記録の改ざんを承認したとされる。ニューヨーク州法では口止め料自体は違法ではなく、また業務記録の改ざんは「軽犯罪」に過ぎない。せいぜい罰金刑止まり。 法律専門家からはトランプ氏が抱える4つの裁判のなかでも、重罪とするには「無理筋」との声が少なからずある。「進歩派」を自認するボストン大学ロースクールのジェド・シュガーマン教授はニューヨーク・タイムズに4月23日に寄稿した一文で、「ニューヨーク州の判例には、一般市民を欺いたという解釈を認めた例はない」と指摘、「このような広範な『選挙干渉』理論は前例がない」などと疑問を呈している。

州最高裁が最終判断か

トランプ氏の有罪評決

 トランプ氏の弁護団は陪審裁判をスタテンアイランド区で行うことを希望したが却下され、予定通りマンハッタン区で行われることになり、選ばれた12人の陪審員が審理した。評決は全員一致でなくてはならず、一人でも反対すると陪審裁判やり直しだが、12人全員が有罪と認めた。

 有罪評決を受け、ボストン大学ロースクールのジェド・シュガーマン教授はニューヨーク・タイムズに4月23日に寄稿した一文で、は、「今回の裁判では選挙詐欺の側面は政治的効果のために誇張されていた」とした上で、「重罪での起訴に値する根本的な犯罪は、ついに明確にされなかった」と指摘。「検察の勝利は、突き詰めれば、リベラル寄りの司法管轄区で裁判を起こし、有利な陪審員を選んだことが理由だと考えられる」と述べた。

 トランプ氏側は控訴するのは確実で裁判は11月の大統領選後も続く見通し。州最高裁までいくものと見られる。トランプ氏の盟友で弁護士出身の共和党のマイク・ジョンソン連邦下院議長は、最終的に連邦最高裁が評決を覆すだろうとの見方を示している。

ハリソン笑顔で日本祭り大盛況

地元現地校の日本人高校生が企画

 ウエストチェスター郡ハリソンで2日、駅隣接のハリソン図書館前の公園を会場にハリソン日本祭りが開催された。快晴の日曜日とあって、大勢の日米市民が詰めかけて大盛況となった。地元ハリソン高校の日本人生徒たちのボランティアによって企画、準備が進められた手作りながら、総合商社をはじめとする大手進出日系企業や食料品店、学習塾、寿司店、リムジン会社など日系社会からも手厚い金銭的支援が寄せられた。企業協賛金と収益の一部は、今年1月に発生した能登半島地震の被災者への義援金となる。(写真上:NYの盆踊りグループBon-Dan NYCのリードで東京音頭などを踊る若者たち(2日午後1時30分、写真・三浦良一)

 ハリソンは、ここ数年で子育て世帯の日本人人口が急速に増えており、会場はさながら日本のお祭り会場のような賑わいとなった。書道や折り紙などの体験と展示を通して日本の文化と理解を深めてもらうための文化ブース、輪投げやヨーヨー釣りなど日本の伝統的なゲームのほかステージパフォーマンスなどのプログラム、焼き鳥、お好み焼き、焼きそば、おにぎりなどお祭り食べ物ブースが並んで長蛇の列となった。地元の消防、警察も全面的に協力した。

 とうもろこしと焼き鳥を焼いていたハリソンの日本食料品店「おいしんぼ」の店主、高田英紀さんは「パンデミック前のハリソン日本祭りをなんとか復活させたいと思っていたら、日本人高校生たちが中心になって実現してくれました。町に笑顔と元気が戻ってきて嬉しいです」と話していた。