自民新総裁に岸田氏

在外選挙で声を

 自民党総裁選は29日開票が行われ、岸田文雄前政調会長(64)が、河野太郎行政改革担当相(58)との決選投票を制し、第27代総裁に選出された。10月4日召集される臨時国会衆参両院本会議の首相指名選挙で首相に選出される見通しだ。

 岸田次期首相の信条は「人の話をよく聞く。聞く耳を持つ政治家」だという。では海外有権者の声をどれだけ聞いてくれるだろうか。前回、岸田氏がニューヨークで一般人と接したのは2017年。国連で開かれていた「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する会合のレセプションで「ペンパイナッポーアッポーペン」の歌手のピコ太郎さんと共に国連本部のレセプション会場で踊りを披露した時だ。わかりにくさから認知度が上がらないSDGsに関心を持ってもらおうと日本の外務省が考え出した苦肉のパフォーマンスだったが、国連職員や各国大使も日本の外務大臣の意外かつ新鮮な一面を見て笑顔と拍手を贈った。その滞在時に岸田氏が在外選挙について何か発言したかは記録も記憶もないので分からないが、近く行われる衆議院選挙、来年の参議院選挙で行われる在外選挙の投票率を上げるための取り組みに本腰を入れて取り組んでもらいたいというのが海外有権者の切実な願いである。

 具体的には、国内に先行して実施計画がある海外でのネット投票と海外有権者へのマイナンバー発行。これは米国のソーシャル・セキュリティーナンバー同等以上の個人背番号制度だが、住民票を外した人だけが権利を得られる在外選挙人登録と、住民表を持っている人にだけ交付されるマイナンバー制度との相反する発行条件の見直しや調整が不可避となる。国内法である公職選挙法は海外では効力を発揮しないため、海外での選挙違反を取り締まることができない片翼飛行の選挙制度向上の切り札としてマイナンバーが浮上している。小さな声が届くか分からないが、海外有権者自身も声をあげていかなくては、日本の国政に海外の声は届かない。いくら首相が聞く耳を持っていてもだ。(三浦良一、本紙発行人)