メキシコ海軍帆船事故 ブルックリン橋でマスト3本折る

乗組員22人が死傷

 マンハッタンのイーストリバーにかかるブルックリン橋で17日夜、メキシコ海軍の帆船が通過の際、マストが橋にぶつかり折れ、乗船員2人が死亡、19人が重軽傷を負った。

 事故は午後8時26分ごろ、ブルックリン側のブルックリン橋公園近くで起きた。メキシコ海軍の練習船クアウテモック号が橋の下を通過したが、3本のマストはどれも橋下の高さより高く、ゆっくりではあるが次々と橋に激突し折れた。乗っていた277人うち22人が負傷し病院に搬送された。重傷だった13人のうちマストから転落した2人の死亡が搬送先で確認された。負傷者は出帆に合わせ、マストの上で整列していた。

 ニューヨーク市緊急事態管理局の広報担当者によれば、マンハッタンの埠頭(ピア)17に停泊していたクアウテモック号は、ブルックリンのウォーターフロントで燃料補給をしてからアイスランドへ向かう予定で、ブルックリン橋に向かう予定はなかったという。事故当時の映像を見るとタグボートの向きとは反対に船が向かっているのが確認できる。ニューヨーク市のアダムス市長は「船はなんらかの理由で動力を失っていた」と述べている。詳しい事故原因については調査中だがニューヨーク市警の担当者は「機械的な問題」が生じ、航行を制御できなくなったとの見方を示した。船の操縦士が機械の故障を報告しており、船が動力を失ったことにより制御不能になったと見られている。

 メキシコのクラウディア・シャインバウム大統領は、事故で乗組員2人が亡くなったことに深い悲しみを覚えていると述べた。

 橋の航行限界高は127フィート(約43メートル)に対しクアウテモック号のメインマストの高さは約160フィート(約50メートル)あった。ブルックリン橋では1921年や1935年など衝突してマストが折れる事故が何度か起きている。最近のものでは1986年に貨物船のレーダーがぶつかって壊れる事故があった。

 クアウテモック号は1982年にスペインで建造され、全長約297フィート(約91メートル)、幅約40フィート(約12メートル)。メキシコの海軍士官候補生のための練習船として国際親善も兼ねて定期的に使用されている。日本にも時々来ており、昨年7月に寄港した。今回はメキシコのアカプルコを4月6日に出航し、254日間かけてニューヨーク、キングストン(ジャマイカ)、レイキャビク、アビレス(スペイン)、アバディーン(スコットランド)、バルバドス、ロンドンなどに寄港する予定だった。

 ブルックリン橋は142年前に建造されているが、大きな損傷はなく40分間ほど一時閉鎖されただけで交通は通常通りとなった。事故を起こした船は調査のためイースト川の埠頭36に係留されている。

(写真)事故調査のため係留された帆船(20日、写真・三浦良一)