外務省医務官として海外邦人を支援 仲本光一さんオンライン講演

JAAサクラ・ヘルス・フェアで

横田めぐみさんの娘と面会

 ニューヨーク日系人会が開催するサクラ・ヘルス・フェアのプログラムとして5月2日、オンラインで、元在ニューヨーク日本国総領事館医務官で現岩手県保健所長会会長の仲本光一さんが「感染症・大規模災害・テロ対応、医療事情ー外務省、自治体での経験からー」と題して講演した。

(写真上) 平城空港での曽我ひとみさんと横田めぐみさんの娘キム・ヘギョンさんの別れの場面。後方左に仲本さんが立っている(ANNのニュース映像/写真・仲本さん提供)

講演要旨次の通り。

盛岡の執務室にて

 私は横浜で10年余り外科医として病院勤務をしていましたが、その後、外務省医務官となり在外公館に勤務、最後は霞が関の外務省診療所で診療所長、現在は岩手県で保健所長をしています。保健所の職務は、地域住民への医療福祉環境問題についてのよろず相談です。外務省医務官も、その国においては唯一の日本人医師というケースもあり、よろず医療相談を受けています。特に最初に赴任したミャンマーは、日本人の使用に耐える病院は一つもないこともあり、在留邦人・旅行者も大使館の医務室に日常的に相談に来ていました。専門外の診療科、特に精神科事例には大変苦労しました。ネットの無い時代であり、国際電話回線も使用が限定されていたため、日本の先輩に対応方法を聞こうと思っても、つながるまで5〜6時間待たされる状況でした。それでも在留邦人の皆様に助けられ育てていただき、何とか“総合診療医”になっていったように思います。その後、インドネシア、東京、インド、ニューヨーク、タンザニア、カナダでそれぞれ3年程度ずつ勤務させていただきました。東京時代には北朝鮮に行き、帰国後も拉致被害者への医療対応を行っていました。えひめ丸海難事故、邦人外交官殺害事件等々、邦人支援では外務省内で大変評価され、大臣から賞をいただく栄誉も得ました。昨年は『想像を絶する難事の日々』を世論時報社で出版させていただき、咢堂ブックオブザイヤー(2024年外交部門)を受賞するという栄誉もいただきました。

 安全・安心な日本ですが、安倍総理暗殺事件、岸田総理への爆弾投下事件、北朝鮮によるミサイル発射等々、最近は日本の治安も不安定になっており、災害・テロ対策について講演会などでお話させていただいています。コロナ禍は世界中が団結して対応すべきという教訓を残したはずでしたが、世界は、団結には程遠い状況になっています。米国WHO脱退、途上国支援中止、長引く局地戦争など、心配な状況が続いています。

 日本のパスポートは世界最強(査証不要)であり、これは、NYの皆様を含む、世界で活躍されておられる先人の皆様のおかげ、と感謝しています。若い日本人には、ぜひ、海外に出て、今後も世界団結のためのリーダーになっていただきたいと思っています。