デジタルアートに共感の場を 糸井七重さん

ウェブデザイナー
ミクストメディア・アーティスト

 糸井七重さんは、2011年に来米、2023年にハンターカレッジを卒業後ミクストメディア・アーティストとしてニューヨークを拠点に活動をしている。和紙や墨などの日本の伝統的な素材と、AR(拡張現実)やモーションキャプチャー、センサー、プロジェクションマッピングなどの最新メディア技術を掛け合わせ、現実とデジタルの境界線で五感を刺激し、身体と空間を巻き込むインタラクティブなアート体験を生み出している。創作の中心には、「人間の思考の構造」「哲学的な問い」「錯覚や洗脳といった認知の揺らぎ」「脳科学への興味」といった、目に見えない内面世界を視覚・聴覚・触覚で可視化することに関心があるという。アートを通して「見えるとはどういうことか?」「信じるとは何か?」という問いを立ち上げ、観る人それぞれの「思考の旅」を誘発するような空間をつくり出すことを目指している。糸井さんの作品は、観客が身体を通して関わり、他者と時間を共有する体験そのもの。観る・触れる・聴く・動くといった行為のなかで、自分自身の認知や感情と向き合い、周囲とのつながりを感じられるような「共鳴する場」を設計している。

 日本とニューヨークを中心に展示やイベントを行っており、最近ではインタラクティブなデジタルアートをダンサーやミュージシャンとコラボレーション、音とライブペイントを使ったパフォーマンス、AIやプログラミングを取り入れた実験的作品をジャンルを超えていろんな種類のアーティストにも取り組んでいる。アートを通じて、思考と感覚、そして人と人の間、人とデジタルの間にある「見えないもの」を照らし出すこと。それが活動の根幹となっている。現在ニューヨーク市内の美容サロンなどでプロジェクションマッピングの映像を発表している。AIを駆使することで100年前の写真が実際に動き出したり、笑顔になったり、数年前までは不可能だった映像を作り出すことができる現代。最前線でクリエーターたちが手探りで作り出す新しいものと自分のアート作品との融合を追求している毎日だ。京都出身。(三浦良一記者、写真は本人提供)