日系強制収容の苦悩をダンスで

舞踊家・振付師
池田 薫さん

 2015年に作ったダンスカンバニー「マスタッシュキャット・ダンス」が第2次世界大戦下の日系アメリカ人強制収容所をテーマにしたダンス作品「フリーダム・イズント・フリー」を上演する。第2次世界大戦中、日系人が強制収容された苦悩から現在の米国、そして世界中で起こっている人種差別について考える作品。ただ「こんなことがあったでしょ、だから謝ってというジャジメントなピースではなくて、歴史をダンスとして構築していく」というスタンスで制作した。自身と同姓同名のイケダ・カオルという人物が、実際にマンザナの日系人強制収容所にいたということを知り、現地を訪れ、収容所を体験した日系人たちの話を聞き、自分がその場所にいたら、どういう気持ちになるのかということを、ダンサーたちに口をすっぱくして言っているという。
 一昨年、ラガーディア・コミュニティー・カレッジでこの作品を上演した時、入国が拒否されたイスラム系7か国出身の学生がこの作品を見て、自分たちより70年も先に人種差別されていた日系人の存在を初めて知ったという言葉を聞き、この作品を作って良かったと思った。そこにこの作品の意義があると。知らない人に知ってもらうことで、そこに歩み寄りが生まれて住みやすい世の中になればと。実はこの作品、昨年5月に上演予定だった。上演の直前、ダンス稽古中に左足アキレス腱を切って手術、絶対安静を医師に宣告された。怪我の翌日、出演予定のダンサーらが集まった。「1年間待つよ」と言ってくれた。劇場をキャンセルし、耐えて1年。そして今回の上演を迎えた。
 大阪府堺市出身。1999年に日本大学芸術学部西洋舞踊コースを卒業、2003年にニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アーツに入学、05年に同大で芸術表現学修士号を取得。15年にカンパニーを設立して本格的に活動を始めた。「高校時代は国連職員になって世界平和に貢献したいと思っていたんですが全然違う方向に来てしまって。でも、自分で選んだ道ですし。ダンスを通じてそういうこともできるかなと、昔の夢と今の夢がコンバインするんじゃないかって思ってます」と話す。 (三浦良一記者、写真も)
▽公演は14日(金)は午後8時、15日(土)は午後7時開演。ダウンタウン・アート(東4丁目70番地)で入場料は一般15ドル、学生・シニアは5ドル(当日の購入も可能、現金のみ)。問い合わせはEメールinfo@moustachecatdance.orgまで。