日本での医師経験を米医療AIに生かす  石井京さん

医療AI企業で臨床戦略担当

 日本で乳腺外科医として働いていた石井京(いしい・けい)さん(30)は、2年前に来米し、サンフランシスコ州立大学でビジネスを学びながら、医療AI分野への挑戦を開始した。臨床現場では患者側の課題だけでなく、医療従事者が抱える業務負担や人手不足といった課題も数多く経験してきた。そうした背景から、AIは医療従事者に取って代わるものではなく、より良い医療を実現するための重要なツールになると考えるようになったという。

 開業医である父が、地域に根差した患者ファーストの医療を提供する姿を間近で見て育ち、自然と医師を志すようになった。2021年に岩手医科大学を卒業後、初期臨床研修を修了し、乳腺外科医として乳がん診療に従事した。多くの患者と向き合う中で、「忙しくて受診の機会を逃してしまった」「病院で長時間待たされることが負担だった」「受診そのものに不安や恐怖を感じていた」といった声を数多く耳にした。この経験から、医療アクセスの改善と早期診断の重要性を強く実感するようになった。

 海外に目を向けるきっかけとなったのは、岩手県立中央病院勤務時代に、横浜市で開催された乳がん学会に参加したことだ。講義した米国の医師が医師免許だけでなくMBA、ビジネス分野での修士号も持っていたこと、そして米国では複数の修士号やダブルライセンスで働いている多くの医師がいることも知った。 

 そんな頃、ヨーロッパでは、家庭で取り扱える小型の超音波検査機が開発されたことも知る。発見が遅れたから治療も大変になる。もう少し、身近なところで自分の病気に気が付く方法はないものかと思っていた矢先だったこともあり、医療AI分野での知識と結びつくことによって、必ず自分の将来の医師としての職業を側面、というより、むしろ真正面から支えてくれる大きな力になると確信した。

 現在は、米国の医療AI企業であるUbieのニューヨーク支社で、Medical Strategyの一員として勤務し、AIを活用した症状評価・トリアージシステムや患者向け医療サービスの品質向上に取り組んでいる。

 また、米国最大級の医療機関の一つであるメイヨー・クリニックとの共同プロジェクトにも参画し、AIによる適切な受診先案内の精度検証を担当している。現在は米国医師免許取得に向けた準備も進めている。(三浦良一記者、写真も)