トランプ時代のインサイダー

 トランプが4月21日にイランとの停戦延長を自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で発表する16分前に、ブレント原油先物4千ロット以上が売られ、当時価格(約101ドル)で名目4億3千万ドルがたった2分間で誰かの手に渡りました。で、その14分後に停戦延長投稿。もちろん原油価格は急落です。

 これだけの話じゃないんです。昨年4月のトランプ関税90日間停止から今年2月28日の対イラン攻撃などに関連して、トランプがインタビューや投稿で攻撃開始だ/停戦だ、ホルムズ開放だ/封鎖だなどと発表する直前という絶妙のタイミングで、ポリマーケットなどの予測市場や原油先物市場で通常の数倍〜数十倍の複数の巨額取引が行われたことが確認されています。これらに関連し、政府や軍の非公開情報漏洩のインサイダー取引疑惑がBBCやブルームバーグなどで報じられました。

 例えば3月23日、イラン攻撃延期発表16分前に、石油先物に5億ドル超規模の原油先物売り注文が集中。発表後に原油価格が急落し誰かが数百万ドルの利益を得ました。4月7日の対イラン停戦発表直前にも石油先物に9・5億ドルの売りベットが行われ、発表後に原油価格が15%下落。逆にS&P500株先物では株価上昇を見込んだ15億ドルという巨額の買いもあった。

 4月17日にはトランプがイランのホルムズ海峡開放宣言を追認する20分前に石油先物に7・6億ドルの下落ベットがあり、直後に原油価格が約10%急落。このベットで取引者(またはグループ)は1億ドル近い利益があったとか。

 一説ではそれら第2次トランプ政権下での不審ベットやトレードは4月下旬までに全12回で12勝0敗、勝率100%。

 いくらなんでもここまで連続して丸儲けって、おかしいでしょ? 普通、確実な情報もなく数億ドル(数百億円超)もの売買や賭けをしますか?

 ネット上ではこれらにトランプの一族や閣僚周辺が関与しているという噂が広がっていますが、それらの根拠・証拠はありません。現在までのところ唯一、今年1月3日の米軍によるベネズエラのマドゥーロ大統領拉致・追放作戦で、その5時間前に、正体不明のトレーダーが3万4千ドル(544万円)を賭け、40万ドル(6400万円)のリターンを得たという件で逮捕者が出ました。この作戦に関与していた米軍特殊部隊の兵士が自ら作戦成功に賭けていたことが判明し、先週拘束されました。

 しかしこれは小さい。小物です。

 他のベットや売買は数万ドルではなく数億ドルです。

 トランプ政権下で繰り返される「完璧なタイミングの完璧な大儲け取引」にはもっと深いところでもっと確実な情報を得ている大物がいるはず、というのは大方の推測でしょう。けれど実際の取引は匿名で、具体的なトレーダー名が出るような証券取引所や米商品先物取引委員会の公的記録はないし、今後もその匿名者が明らかになることはないでしょう。

 そういうものです。なぜなら、今の超高度金融資本主義社会では、富はいかにハードに働いたかによってはもたらされていません。経済システムがいかに富裕層にとって都合よく働くかによってもたらされているからです。こうして今、米国の富の60%は相続によるものとなりました。第二次世界大戦後に生まれた大量のブーマーズからその子のミレニアルズたちへの相続額は史上最大で、対して一般人は政治的経済的影響力を持っていないがゆえに置き去りにされるシステムなのです。トランプ政権は富裕層や企業の減税及び規制撤廃と、それにさらに拍車をかけているわけです。(武藤芳治/ジャーナリスト)