印刷芸術の社会的意義
「プリンティングという表現がいかに多くのものを社会にもたらしてきたかを改めて学び、深い感銘を受けている」(佐藤)
ハーバード大学美術館で1月24日から5月10日まで開催されている『Critical Printing(クリティカル・プリンティング)』の告知作品にニューヨーク在住のアーティスト、佐藤正明の 作品「Subway No.24」が選ばれた。同大では以前からクリティカル・プリンティングの講座があり広範囲かつ歴史的観点から研究しており、今回はその一環の展覧会となる。クリティカル・プリンティングは、美術史やメディア研究の文脈で、印刷物を単なる複製技術としてではなく、社会的・政治的・文化的な意味を持つ表現形態として批判的・分析的に考察する概念を指し、ハーバード大学などで学術的な研究テーマとして扱われている。これは、印刷が知識の普及、権力の構造、芸術表現にどう影響を与えてきたかを探求するもので、デジタル時代における「印刷の批評」とも関連している。
(写真上) CREDIT Masaaki Sato, “Subway No.24,” 1978. Screenprint. Harvard Art Museums/Fogg Museum. Margaret Fisher Fund, M23683. (C) Masaaki Sato
https://harvardartmuseums.org/exhibitions
主なポイントは、美術史的視点として活版印刷から現代のデジタル印刷まで、印刷技術の変遷が芸術作品や文化に与える影響を分析。メディア論的視点として印刷物が情報伝達、権力闘争、アイデンティティ形成にどのように機能してきたかを批判的に検討。学術研究として ハーバード大学の美術史・建築史学科などで「クリティカル・プリンティング」という名前の講義や研究テーマが存在。デジタル時代への関連としてはデジタル技術が進む中で、物理的な「印刷物」が持つ意味や、デジタルと印刷の関係性を再考する意味合いも含まれまれている。 つまり、「クリティカル・プリンティング」は、印刷の「なぜ」「どのように」を深く掘り下げ、その社会的・文化的意義を批判的に読み解くためのアプローチと言える。
佐藤は「今回の展覧会『クリティカル プリンティング』は、ハーバード大学が長年にわたり社会的・歴史的視点から幅広く行ってきた研究成果を、視覚的に体験できる大変意義深い試みだ。その象徴として私の《Subway No.24》が選ばれたことを、心より光栄に感じている。展覧会の趣旨に触れるたび、プリンティングという表現がいかに多くのものを社会にもたらしてきたかを改めて学び、深い感銘を受けている。この歳になってなお新たな気づきを与えてくれる機会を得て、その代表として私の作品が取り上げられていることに、身の引き締まる思いだ」と本紙にコメントした。 (三浦)

佐藤正明
1941年 山梨県甲府市生れ。ニューヨーク在住。ニューヨークに住んでニューヨークを描く、アメリカ現代美術のアーティスト。制作テーマは、ニューススタンド、穴。マンハッタンの名門画廊OKハリスと30年ほどの長きにわたり専属契約をしているアーティスト。OKハリスのオーナー、アイヴァン・カープ氏は、かつてレオ・キャステリの右腕としても知られ、ともにアンディ・ウォホールやロイ・リキテンシュタインなどアメリカ現代美術の代表的な作家を世に送り出した人物。 甲府絵画研究所(山梨県、甲府市/1962-66)、ヘザリー美術学校(イギリス・ロンドン/1967-69)、ブルックリン美術館付属美術学校(ニューヨーク州、ブルックリン/1971-74)、ブラット大学、グラフィック・センター(ニューヨーク州、ニューヨーク/1974-76)に学ぶ。

