大統領権限に勝る 首相解散権

 衆議院総選挙が2月8日に行われる。60年ぶりの通常国会冒頭での解散、1年

3か月ぶりの解散、国民生活に必要な予算後回しの解散など、異例尽くしである。日本の首相の解散権は世界最強と言える。国民に選ばれた国会議員の地位を、首相の都合で突如奪えるからだ。

 「英国の首相は自由な解散権を持つ」という学説は妥当でない。英国首相の解散権にはさまざまな制約がある。英国やカナダなど議会制民主主義国の大多数が任期満了に近い選挙である。

 首相解散権が強い最大の理由は、国会の権限が弱いからである。国会は解散を制約できない。法案の8割を政府が提出する。条約の承認権がない。閣僚、日本銀行総裁などの人事拒否例がほとんどない。英国議会よりもはるかに弱く、国民主権の軽視と言える。

 英国以上に、米国議会は予算編成、法案提出、閣僚や大使の人事や条約の承認権を持ち、GAO(行政監察院)や議会予算局などの独立組織も含めて強大な権限を持つ。

 その議会以上の権限を誇示しているのがトランプ大統領である。大統領令230件以上。関税威圧外交、ベネズエラ介入、グリーンランド奪取宣言、政府

高官の解任、デモ鎮圧のための軍や警察派遣、メディア検閲などである。

 しかし、その大統領でも議会の解散権はなく、議員は2年と4年の任期を全う

する。つまり、米国大統領の強大な権限に勝る権限を日本の首相が持つ。この解散権が首相の平均在任期間を世界最短クラスの約2年としている。これでは各国首脳からの深い信頼は得られない。比類ない自由な解散権が国益に反することが今回明確になったと言える。

 首相が国会に長時間拘束されるのも国益に反する。首脳外交や政策立案を担う時間を国会は与えるべきだ。紛争の同時多発や関税戦争が拡大し、各国は合従連衡を競っている。議会やNPO等も駆使した多層外交も強化している。国会が弱く、外務省オンリーの日本ではしたたかな外交ができない。

 外交・安保に限らず、経済、社会保障などの国家戦略立案や危機管理を担う体制の不在が「失われた30年」の原因でもある。

 大統領権限に勝る首相解散権を改革し、長期的な国家のかじ取り体制を整える時である。これは日本の存亡に関わることであり、憲法改正ではなく超党派による国会法などの改正で早期実現をはかる時である。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。