【編集後記】
みなさん、こんにちは。休刊週があり、2週間ぶりの紙面になります。日本のホラー映画ブームの火付け役ともなった映画「リング」(1998年公開、鈴木光司原作、中田秀夫監督)の上映会が5月28日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで行われ、日本から原作者の鈴木光司氏が来米してステージで司会者の質問に答えていました。この映画が公開されてからかれこれ30年近くにもなるのですね。私はと言えば、あの頃は、長い黒髪の白衣の女性がテレビのブラウン管から這い出してくる光景があまりに怖くて映画を見ることができませんでした。今回もどうしようか迷ったのですが、取材する以上見ないわけにもいかずにJSで見ました。「私の映画でお化けが出てくるのは貞子だけです。どのホラー映画でも、血やグロテスクな映像や暴力シーンは出てこない。極めてロジカルな理由でお化けが存在しているのです」という監督の言葉通り、この30年間に進化したCG効果による何でもありの過激なハリウッド映画ばりのアニメだか実写だか訳がわからない映像が蔓延る中、現代となっては亡霊のようなVHSビデオデッキの残像に残る貞子の音のない「見てはいけない映像」の方がよほど不気味でしたが、意外にもインディアナジョーンズばりの井戸掘りシーンなども予想外に新鮮で、実際は理不尽な悪夢に苛まれるような作品ではありませんでした。化けて出てくる貞子にも理はあるなと。JSでは珍しい日本映画が上映されるので結構なことですが、観客の9割9部がアメリカ人です。米国に日本文化の良さを伝えることを目的に100年以上前に設立されたJSは、アメリカの財団ですので仕方がないですが、当地に住む日本人も楽しめるイベントがいっぱいあるので、紙面でこれからも紹介していきたいです。夏の日本映画祭JAPANカッツでは、BreakingDownの面々が出る「ブルーファイト」など今年も話題作が目白押し。詳細は来週号でお伝えします。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)