クイックUSAアメリカの人事部(14)

283件のCOVID-19関連訴訟とその内容

 7月10日現在、弁護士事務所のフィッシャー・フィリップによるとCOVID-19に関わる職場における訴訟が283件確認されており、そのうちの122件(43%)は6月にファイルされている。6月の提訴の件数は異常に増えていると言えそうだ。それでも全てをトラックできているとは言い切れない状況である。このうち63件はWork From Homeの選別に関わる差別、62件は休暇の申請に関する差別に関わることである。

 報復に関するケースは41件。ここで考えられるのは例えば、FFCRA(Families First Coronavirus Response Act: Employer Paid Leave)を申請をしたところそれを理由に解雇、降格、低評価を受ける、嫌がらせを受ける等が行った可能性がある。安全でない労働条件や個人用保護具の不足による訴訟が26件起こっている。カリフォルニア州であれば、IIPP(Injury Illness Protection Program)に則り、さらにCOVID-19の項目を追加の上、トレーニングとともにオフィス環境を整えることが求められる。また、賃金と勤務時間(休憩時間や残業代等)の支払いに関わる訴訟は26件起こっている。Work From Homeになると時間の管理、休憩時間、残業代の支払いの管理が行き届かなかったり、あるいは、Exemptの給与減や給与差し引きがExemptの基準に合っていなかったということもありえるだろう。

 さらに、41件の集団訴訟が起こっていて、パンデミックは集団訴訟を呼んでいるとも言える状況だ。集団訴訟の多くは安全でない労働条件や賃金と勤務時間(休憩時間や残業代等)に関わる内容である。facebook等でも雇用者を訴える成果報酬型の弁護士事務所が頻繁に広告を出していることにお気づきだろうか?従業員はより頻繁に訴訟の機会に触れていると思われる。更に、ステイホームの状況が多くの従業員をいらつかせ、怒りを増幅しやすい環境になっているとも言える。州別に見るとCalifornia (47件)、Florida (32件)、 New Jersey (31件)、 New York (21件) 、Texas (19件)となっている。カリフォルニア州がもっとも従業員からの訴訟が多い州と統計上言われるが、今回のCOVID-19のケースにおいてもトップを走っている状況だ。

 ニュースになったケースを見てみるとイリノイ州のウォルマートでCOVID-19に感染して死亡した従業員の家族が会社を訴えているケースがある。また、インディアナ州では、COVID-19に感染した可能性があると考えて自己隔離をしていた従業員が解雇されたため、差別による不当解雇で訴訟を起こしている。あるいは、ヘアスタイリストの従業員がロックダウン直前に仕事をした分の賃金未払いで訴えているケースもある。

 このような訴訟を未然に防ぐため、企業経営者、人事担当者は下記のような対策をとっていく必要があるだろう。

・企業の責任と従業員の権利を理解して実践すること

・FFCRA等新しい休暇法の要件について人事担当者がよく理解をして、現場マネジャーを教育すること。

・従業員が職場に戻ったときに、包括的な安全計画を作成して伝達、訓練、実践をすること。

・パンデミックの進展に伴って発生する可能性のあるさまざまな賃金と時間に関わる責任を予測の上、対策を立てて実行すること

・従業員のことを真剣に思いやる愛

 従業員のことを真剣に思いやる愛があればこそ、全ての施策が実行されるとも言えるかもしれない。引き続き皆様の安全と健康、そして、可能な限りのビジネスの再興をお祈りしております。

(山口 憲和 Philosophy LLC 代表)

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