米・イラン会談を支えるスイスの仲介外交

 米国トランプ大統領は、6月17日フランスで、イランのペゼシュキアン大統領との14項目の覚書に電子署名しました。21日にはスイスで、ヴァンス副大統領とイランのガリバフ国会議長が会談し、60日以内に覚書の最終合意に至る工程を決定し、作業部会を設置しました。米・イランの直接会談は4月のパキスタン以来ですが、今回もイラン側は米国との写真撮影を拒否しました。

 仲介国はパキスタンとカタールでしたが、調整と橋渡し役を務めたのがスイスでした。私はこの時期にスイスの国際ICの会議に参加中で、関係者からスイス政府の対応をうかがいました。スイスは、米国がイランとの国交を断絶した1980年以降、米国のイランにおける利益代表国(保護国)として、両国間での拘束者問題や核合意問題などの仲介を行ってきました。2015年の両国による核合意(JCPOA)もジュネーブで行っています。

 今回はジュネーブではなく、スイス中部ビュルゲンシュトック山中での開催でした。カタール資本のホテルで完全隔離でき、アクセス道路も1本でメディアも遮断。空域を閉鎖し、ドローンやヘリの接近も完全遮断。これらの予算を国会が承認して軍や警察などが対応しました。イラン側が一時退席の場面もあった中で、両国間を往復し徹夜での合意にこぎつけたとのことです。

 スイスが、こうした仲介外交の実績が豊富なのは、永世中立国で、NATOやEUといった軍事・政治ブロックに属していないことが強みです。永世中立国とは、軍事同盟に入らない、戦争に参加しない、紛争当事者に武器を供与しないことが基本です。EU加盟国でないので対ロシア制裁などの政治的立場にも拘束されません。本年もコンゴ民主共和国と武装勢力 M23との停戦合意を仲介したほか、南北朝鮮間の対話も行われていると言われます。

 今回の合意は、ホルムズ海峡閉鎖による世界経済への影響と、対イラン戦争に反対する米国議会や世論に配慮したトランプ大統領の決断であり、イラン側に有利な内容です。故にイスラエルの反発も強く、同国軍によるレバノン領内のヒズボラ攻撃も続いています。今後も米国・イランの協議はスイスで随時開催されるようですが、イスラエルともパイプを持つスイスの仲介外交に期待するものです。本来は日本もそうした貢献を果たすべき時ですが。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー。慶大卒。国際ICや難民を助ける会等の民間外交活動を経て国会議員、民主党国際局長、財務副大臣等を歴任。現在、国際IC日本協会理事、岐阜女子大特別客員教授、東アジア共同体研究所特別研究員。英国在。