第15回「ことばの泉」年間大賞入賞作品発表

第15回「ことばの泉」年間大賞入賞作品発表

■応募総数約900点、掲載作品189点、第一次審査通過15点から選ばれた優秀6作品

本紙創刊と同時に始まった児童生徒の作文コンクール「ことばの泉」は今年で15回目を迎えました。ニューヨーク近郊の3州をはじめテネシー州、ミシガン州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州など遠方からの応募も増え、年間応募数はおよそ900点を数えました。
今期の年間大賞は2017年11月第一週から昨年10月末までに掲載された189点から、第一次審査として編集部が15作品を選出。その15作品を対象に審査員5名による厳正なる最終審査が行われ、年間大賞6作品が選ばれました。
昨年12月7日、審査員の方々を招いてニューヨーク日系人会にて表彰式が開催されました。本号では表彰式の模様と、入賞作品全6作品を発表します。入賞者の皆さん、おめでとうございます。

最優秀賞 「アメリカ人になると」

ニューヨーク補習授業校小6 藤田 修敬

在ニューヨーク日本国総領事館の阿部康次主席領事より最優秀賞の表彰状を受け取る藤田修敬さん

 ぼくは日本人です。東京で、日本人の母から生まれたからです。ぼくは、三才のときにニューヨークに来ました。だから、日本に住んでいたときのことは何も覚えていません。今は、日本語よりも英語を使うほうが便利ですが、それでも、自分をアメリカ人だと思ったことはありません。
 ぼくたち家族がグリーンカードを取ってから、そろそろ十年になります。両親が相談した結果、アメリカの市民権を取ることになり、夏休みに手続きを開始しました。書類を出すとき、母に「英語の名前を付けたいと思う。」と、聞かれました。正式に名前を変える最後のチャンスだというのです。「今の名前が一番自分に似合ってると思う。」 と、ぼくは答えました。ぼくは、アメリカ人になるということはどういうことなのか、書いてみたいと思います。
 まず、アメリカ人になると、選挙ができます。自分の考えに近い人を自分で選ぶことができます。去年、アメリカの大統領選挙があり、どんな人が大統領にふさわしいかについて、いろいろ考えさせられました。ぼくは、自分と違う考えの人をダメだと言ったり、イスラム教の人は全員悪者だと言ったりする人は、ふさわしくないと思っています。
 次に、アメリカ人になると、家族にアメリカの永住権を申し込むことができます。つまり、母がアメリカ人になれば、日本に住んでいる祖父母やおじさんもグリーンカードを取ってアメリカに永住できる可能性があるのです。また、アメリカで生まれなかった子どもにも市民権が与えられます。父母がアメリカ人になれば、ぼくも自動的にアメリカ人になります。
 それから、郵便局や図書館などで働く国家公務員の仕事をすることもできます。アメリカ人でなければできない仕事もあるので、これもベネフィットの一つです。
 しかし、アメリカの市民権を取ると、日本国せきを失うことになります。「アメリカに忠誠をちかう」という質問の「イエス」のらんにチェックを付けるとき、父も母もとてもなやんでいましたが、二つの国のパスポートを持つことはできないのです。
 ぼくがいちばん心配していることは、もし戦争が始まって、ぼくが18才になっていたら、アメリカ人としてアメリカの国を守るために戦わなければならないということです。アメリカと日本が戦争をしたら、ぼくは日本人と戦えるでしょうか。第二次世界大戦中、本当にそういうことを経験した日系人がたくさんいたそうです。戦後、日本は戦争をしないという憲法を守っていることを、ぼくは素晴らしいと思っています。
 できれば、アメリカも日本と同じように「戦争をしない」と決めてほしいと思います。そして、アメリカだけではなく世界中の国が「戦争をしない」と決めれば、本当に平和な世の中になるのではないでしょうか。
 アメリカ人になったからといって、ぼくの中身が変わるわけではありません。ぼくの心の中はやっぱり日本人のままだと思います。 (渡米9年)