その日に今年も寄り添って

同時多発テロ19年目の追悼

死亡消防士27人追加

 9・11同時多発テロで倒壊した世界貿易センターでの任務中や後遺症により、多くの消防士を失ったニューヨーク市消防局(FDNY)は9日、ブルックリンのメトロテックセンターにあるFDNY世界貿易センター・メモリアルウォールに2019年に亡くなった消防士27人の名前を追加し敬意を表した。FDNYの消防士らは、9・11での任務後にさまざまな種類のがんや呼吸器疾患などを発症し、226人が病死している。

 約3000人が犠牲になった9・11同時多発テロから19年目を迎えた11日、全米各地で追悼式典が開かれた。ニューヨークの式典にはペンス副大統領、バイデン前副大統領、クオモNY州知事らが参列、犠牲者の名前が読み上げられたほか、2棟のビルに旅客機が衝突した時刻とビルが倒壊した時刻に鐘が鳴らされた。また、日没後には犠牲者を悼むツインタワーをかたどった青い光のインスタレーション「追悼の光(The Tribute in Light)」がライトアップされた。トランプ大統領は4機目の旅客機が墜落したペンシルベニア州シャンクスビルで開かれた式典に参列した。

「光の柱」植山慎太郎撮影

来年は訪れたい

杉山陽一さん父
日本からのメッセージ

 住山 一貞さん(84)の一人息子、杉山陽一さんは、2001年9月11日の米同時多発テロで亡くなった24人の日本人犠牲者の1人だ。陽一さんは当時34歳で、日本の銀行の米国事務所にいて犠牲になった12人のうち最年少だった。9・11メモリアル南プールには日本人犠牲者たちの名前が集まって記載されている場所がある。毎年この日に合わせて来米してきたが、今年は新型コロナウイルスの蔓延もあり断念した。

 住山さんが9月11日に米国を訪問しなかったのは、5年目の年に息子の日本の勤務先での式典出席で来ることができなかった1度だけだ。住山さんは毎年、この時期に開催される合唱コンサート、風の環コンサートに招待されて「辛い気持ちが癒される」と今年も楽しみにしていた。多くのボランティアのお世話にもなった。今回来ることは叶わなかったが11日、本紙にコメントを寄せてくれた。

 「ニューヨーク、ニュージャージーの皆様、お元気ですか。テレビのチャンネルを切り替えながら、ニューヨークの情報を追っています。人影の無いタイムズスクエアの映像は衝撃的でした。でもようやく屋内での営業が許可されたようですね。一日も早い復旧を願っています。日本のほうは、東京の感染がなかなか収まらず、夏休みの帰省も自粛するようにとの事でしたが、9月に入って、警戒レベルも5(最高ランク)から4に下がり、10月から東京も旅行対象として補助金が出るようです。今年の追悼式は、日本からは誰も行けなかったと思います。私もこの日、日本ににいるのは久しぶりで、19年前の出来事を、空路再開の15日まで、タイムラインを追って追体験することになりそうです。来年は20周年という大事な年なので、日本の家族の方たちもぜひ参加したいと願っていると思います。皆様とお会いできる日を楽しみに。(住山一貞:84歳:杉山陽一父)

(写真左)メモリアルで犠牲者を追悼する訪問者たち、(写真右)陽一さんの名前が刻まれたメモリアル(11日午後、小味かおる撮影)