粘りの逆転優勝

全米オープンテニス

黒人差別マスクで表現
日本国籍選択の大坂

 テニスの全米オープン女子シングルス決勝が12日、クイーンズにあるナショナル・テニスセンターで行われ、大坂なおみ(22、日清食品)がビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ、31)を逆転勝ちで下し優勝した。ツアー通算6勝目で、優勝賞金300万ドル(約3億2千万円)を獲得した。全米オープン優勝は一昨年に続く2度目で、4大大会(グランドスラム)タイトル獲得は3つ目となる。

 第一セットはコントロールのよいアザレンカに圧倒され大坂は1〜6で落とした。ミスの連続に苛立ちを隠せずラケットを投げる一幕もあった。第2セットも2ゲームを連取されるが、ここから粘りを見せ、スイッチが入ったように強さを取り戻し6ー3で逆転して終えた。第3セットも6ー3でもぎ取り、セットカウント2対1のフルセットで逆転勝ちした。大坂は優勝が決まると喜びの声をあげ、疲れを癒すようにコートで仰向け寝て空を仰いだ。

 2年前の同大会決勝ではセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)にストレートで勝ったが、暴言を吐くウィリアムズが主審から3度の警告を受けるなど波乱の試合で、表彰式では結果に不満をもつ観客からのブーイングの嵐に大坂に笑顔はなく涙ぐんだ。

 今回は新型コロナの影響で無観客で行われた。表彰式では穏やかな表情で「1時間で負けたら恥ずかしいと思い、悪い態度をやめて頑張ったことが試合の転換点となった。楽な試合ではなく大変だったが勉強になった」と述べた。なお今大会、ウィリアムズは準決勝でアザレンカに敗退している。

 今大会、大坂は警官から射殺された黒人の名前を書いたマスクを着けて試合会場入りした。決勝までには7試合あり、異なる7人の犠牲者の名前を書いたマスクを用意したと語っていたが、見事にすべて使った。決勝でのマスクには2014年に公園でおもちゃの拳銃で遊んでいて警官に射殺された12歳のタミール・ライス君の名前が書かれていた。

 表彰式で「7つのマスクのメッセージは何か」と尋ねられると、「そうですね。あなたはメッセージどう受け取りましたか」したうえで、「どのように受け取られたか興味があります。より多くの人がこのことを話すようになるといいと思います」と答えた。

 大坂なおみは1997年10月16日、大阪府大阪市生まれ。父親はハイチ生まれの米国人で、母親は北海道根室市出身の日本人。姉とともに3歳でテニスを始め、2001年にニューヨークに移住。ナッソー郡エルモントに住み、全米オープンの会場でもあるナショナル・テニスセンターに練習に通った。2006年にフロリダに移住。プロツアー出場資格が得られる14歳となった2013年にデビュー。2018年に全米オープンで日本人初の四大大会(グランドスラム)シングルス優勝。2019年に全豪で優勝し男女を通じてアジア初の世界ランキング1位に。日米の二重国籍のまま日本テニス協会に所属していたが、2019年、22歳の誕生日を前に日本国籍を選択。身長182センチ。体重75キロ。

(写真)7回の試合で7人の黒人犠牲者の名前のついたマスク Photo: usopen.com