入試黒人優遇は違憲

最高裁判断に大統領反対、保守は歓迎

 連邦最高裁は6月29日、ハーバード大学とノースカロライナ大学の入試選考で黒人などマイノリティーを優遇する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を違憲と判断した。憲法修正第14条の「法の平等な保護条項」に違反しているとし、ロバーツ最高裁長官は「学生は人種ではなく、経験に基づく個人として扱われなければならない」との見解を示した。

 バイデン大統領は「最高裁の判決に強く反対する。これは正常な裁判所ではない」と激しく非難する一方、次期大統領選で再選を目指す共和党のトランプ氏は「誰もが待ち望んでいた。アメリカにとって素晴らしい日だ」と絶賛した。トランプ氏は大統領在任中に保守派3人を最高裁判事に指名したことからリベラル3人、保守派が6人と保守が優位になり、ノースカロライナ大に対しては6対3、ハーバード大学に対しては6対2で違憲となった。

 裁判を起こしたのは、保守派の活動家エドワード・ブラム氏が2014年に組織した「公正な入学のための学生たち(SFFA)」という団体。入学選考に不満を持つアジア系学生を原告に集め、アファーマティブ・アクションが白人とアジア系志願者に対する逆差別になっているとして、私立のハーバード大と公立のノースカロライナ大を相手取って憲法訴訟を起こした。1審と2審では人種だけを根拠に定員の枠を定めるのは違憲としたものの、積極的差別是正措置は合憲として大学の主張を認めたが、最高裁で覆った。SFFAの関係者は「アジア系コミュニティーの勝利、もう二級市民扱いはされない」などと述べ、勝利に湧いている。

 しかし、ワシントンポスト紙は1日、「一部のアジア系米国人には勝利ではない」と伝えた。アジア系社会は貧富の差が大きく、貧しいモン族やカンボジア、ベトナムなどの東南アジアの難民とその子孫は判決を非難していると報じている。

裕福な白人が恩恵

アファーマティブ・アクション廃止

 アファーマティブ・アクション廃止で恩恵を受けるのは英語に堪能で裕福な高学歴のインドおよび中国系とみられ、実際、訴訟を起こしたSFAの原告は裕福な中国系移民ばかりだ。

 制度廃止で、大学にはアジア系がさらに増え、黒人および中南米系は減ると見られるが、裕福な白人もこれまで以上に恩恵を受けるという指摘もある。米国の有名私立大学では裕福で著名な家の志願者を優遇する「レガシー選考」があるが、6月30日付ニューヨーク・タイムズは、「(アファーマティブ・アクションがなくなる一方)これがそのまま残る結果、あらゆる人種の低所得学生とその家族が不利益を被ることになる」というフォード財団のダレン・ウォーカー会長の寄稿を掲載した。

 アファーマティブ・アクションは1961年にケネディ大統領(民主党)が導入して以来、企業の採用活動にも反映されるなど社会に浸透していた。人種を考慮した入学選考は教育の多様性を生み出し、マイノリティーだけでなくすべての学生に利益をもたらすとされ、2014年の最高裁判決でも合憲とされた。ただし禁止はできるとした。

 逆差別であるとの主張も強くあり、アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ジョージア、オクラホマ、ニューハンプシャー、ミシガン、ネブラスカ、ワシントンの9州ではアファーマティブ・アクションは禁止されている。