留学・研修ビザ面接停止 邦人留学生も路頭に

全世界の米国大使館で

ハーバードは非課税枠撤廃

 ルビオ米国務長官は5月27日、世界各地の米国大使館に対し、大学留学などに必要な学生ビザ取得申請者の面接予約を一時停止するよう命じた。「反ユダヤ主義」とみなされる外国人留学生がいるとの主張を受け、ビザ申請者による交流サイト(SNS)への投稿履歴の審査を厳格化することが目的としている。

 新規面接予約の停止がが対象となるのは一般学生向けのFビザはじめ、職業研修・訓練を受けるMビザと交流訪問者向けのJビザも含まれる。小中高生や大学院生を含むあらゆる学生が対象で日本の留学希望者にも影響すると見られる。

 有名私立大のハーバード大学に対しては①学生の抗議活動に関する詳細な報告と関与学生の情報提供、②特定の学生団体(例:パレスチナ支援団体)の認可取り消しと関係者の処分のほか、③多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムの廃止、④キャンパスでのマスク着用禁止などを要求。しかし、ハーバードがこれらの要求を拒否したため、政権は助成金約22億ドルや契約金の凍結、さらに大学の非課税ステータスの取り消しをIRS(歳入庁)に要請した。5月22日には留学生の受け入れ資格認証も取り消した。大学側は訴訟を起こしている。

どうなる日本人留学生?

ハーバード大学に260人が在籍

 ハーバード大学に現在在籍する外国人留学生は約6800人で、全体の約27%を占める。トランプ政権によるSEVP(留学生受け入れ資格)の取り消しにより、2025ー2026学年度においてハーバード大学はF1およびJ1ビザを持つ新たな留学生を受け入れることができなくなったため、在籍する留学生も大きな不安に直面している。

 ハーバードに在籍する日本人留学生約260人はF1またはJ1ビザを保持しているが、SEVPの取り消しにより、2025ー2026学年度にハーバードに留まる場合、米国の滞在資格を失う可能性がある。その場合、他のSEVP認証を持つ大学に転籍するか、米国を離れる必要がある。転籍しない場合、強制送還のリスクがあり、卒業間近の学生にとっては特に深刻だ。

 米国内ではイェール大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ベンシルベニア大学、スタンフォード大学などが積極的に受け入れを行っている。

 ハーバード大学は入学許可を受けた留学生に対し、海外の大学との「同時入学」を認める方針を打ち出した。他国の大学も検討できることとなり選択肢が広がった。5月31日までに、日本では東京大学、京都大学、北海道大学、九州大学などが転校を受け入れると表明、大阪大学や関西大学も検討中としている。カナダのトロント大学、中国は香港科技大学やマカオの複数の大学、マレーシアではサンウェイ大学などが受け入れを表明した。

 英国はケンブリッジ大学やオックスフォード大学などを擁するラッセル・グループ大学が受け入れを検討している。

 ハーバード大学への締め付けは、米国からカナダや英国、アジア諸国に人材が流出し、研究開発とイノベーションの停滞する可能性がある。また自由な言論や多様な視点の研究を阻害する可能性があり、学問の自由・言論の自由の危機にもつながると懸念されている。