海外有権者ネットワーク第1回オンライン会議

投票率2%の 在外選挙

 日本では春の大型連休、ゴールデンウィーク明けの5月7日に、海外有権者ネットワークの初のオンライン会議が開かれた。参加者は、ドイツ・フランス・イタリアなどのヨーロッパ、アメリカからはNY、LA日本などから10人が参加した。海外有権者ネットワークとは、日本国籍を有する海外在住者や日系人の有権者が「在外投票の普及」の為にネットワークを組んで、在外投票の投票率向上のために意見交換を行っている会である。

  私は1981年に渡米したが、海外に住んでみて「日本国内から見る日本」と「海外から見える日本」

が違って見えることに驚いた。国土を比べると、日本はカリフォルニア州にも及ばない。天然資源は少なく、生きて行くには貿易に頼るしかない。母国の繁栄を祈る気持ちは、国内の日本人よりも強い。日本の存続には、世界中が平和で自由に交易が出来る「自由貿易」が続くことが大切なのである。

  その意味で、海外からの視点を日本の国政に反映するには、国会議員の選挙を通じて海外有権者の意思を表すことのできる「在外投票の実現」が望まれると、1995年から「海外から一票を!」という運動が始まり、2005年に最高裁での勝訴によって在外投票制度が実現した。ところが投票率はなかなか上がらない。制度が海外の実態に沿ってないのが主要な原因だと考えられる。2010年に「在外投票を推進する議員連盟」が結成され、様々な働きかけで少しずつ改善されているものの、投票率は2%前後と低迷している。

 これでは「海外からの視点を国政に反映させる」という目標は達成されない。さて、どうするかと海外有権者ネットワークは今年の活動目標を具体化して、意見交換のオンライン会議を開いたのである。

  7月には参院選が行われる。世界の仲間が意見交換し、現地情報や問題点・改善点などを出し合って現地公館や日系メディアに協力を求め、議連を通じて総務省や外務省に働きかけるというのが今回のオンライン会議の目的である。当面は「在外投票のネット投票制の実現」が目標である。

 今回の会議では、海外有権者ネットワーク主催の「模擬投票の実施」も話題に上った。日本の実証実験で実績のあるシステム構築会社の支援も受けられそうだ。今後、年に数回のオンライン会議を開き更に知恵を出し合おうと盛り上がった。具体的な行動目標が明らかになり、推進力が加速することを願っている。

(海外有権者ネットワーク・日本代表 若尾龍彦)

海外の有権者が初めて意見交換


海外有権者ネットワーク 第1回オンライン会議出席者

◇ドイツ:トルン紀美子

◇フランス:ピレー千代美

◇イタリア:茜ケ久保徹郎

◇NY:竹永浩之、竹田勝男

◇ロサンゼルス:朝倉巨瑞

◇日本:若尾龍彦、住山弘、

スパイラル社(模擬投票のシステム構築の会社)

◇メディア:三浦良一(週刊NY生活)


 日本時間5月7日夜、海外有権者ネットワークのオンライン会議が開催され、日本、ニューヨーク、ロサンゼルス、フランス、ドイツ、イタリアからの参加があった。

 若尾氏(日本):今回は初めての在外日本人のオンラインミーティングで、時間を合わせるのは難しく参加できない方もいたが、世界の在外日本人が意見を交わす場は大変有意義である。また4月に「在外投票を推進する議員連盟」(以後、議連)に参加し、議連に名を連ねる議員は90名を超えていると報告された。

 竹永氏(NY):今回4月の日本渡航で、議連の逢沢会長と西村事務局長と面会した。今回は、次回の議連のテーマを決めることと、在外ネット投票、遠隔地のビデオ通話による本人確認の方法の問題点や投票数などの調査報告を総務省に求めた。また投票率の向上のためには出国時申請が有効とし、外務省がチラシを作って自治体で配っている。また、国会での「在外ネット投票の議案」を出すようにとの陳情も行ったことを報告。

 竹田氏(NY):日本からの出国時登録が投票率アップには有効で必要ではないか、と提案。

 朝倉氏(LA):在外での投票ができるようになっているにも関わらず、在外の投票率は2%以下となっており、危機的な状況にあると考えている。LA総領事館での選挙担当領事との面会に際し、投票所の増設とネット模擬投票の承認を求めたが、いずれも外務省からは難しいとの返答を受けたと報告。またLAの日本語メディアに「選挙に行くこと」「選挙人登録をすること」を宣伝してもらうように協力を求めた。

 市ノ澤氏(スパイラル社):これまでの民主党からの法案提出や、つくば市とマイナンバーカードを使った投票システムの取り組みに関しての説明があり、議連の取り組みも間接的に関わっていることで、ネット模擬投票のシステムの提供に賛同している。在外日本人は2015年より以前に出国した人にはマイナンバーカードが取得できないというルールがあるため、マイナンバーカード以外でも本人確認できるように対応する。パスポートでの本人確認は可能だが、在住者カードなどの様々な身分証明書でも広く有効にできるシステムは可能。

 ピレー氏(フランス):長年に渡り、日本での多重国籍を認めるよう国籍法改正を訴えている。フランスには外国人登録証があるので、これで本人認証をすることを提案。

 トルン氏(ドイツ):海外の日本語メディアは、更なる広報推進で注目度は上がり、効果が徐々に広がると期待する。

 茜ヶ久保(イタリア):意見交換の場で、選挙候補者の政策や取り組み姿勢の情報を伝える方法が必要。総務省のHPで、一定のスペースや広報ルールに従った「候補者の情報発信ができないか」を議連を通じて総務省に打診する。

 竹永氏(NY):現在選挙に関してはさまざまな取り組みがあるが、最終的には全てをネット化することが解決になると提案。

 住山氏(日本):長年に渡り選挙ができるように活動をしてきたので、もっと選挙しやすい環境が整うことを願う。総領事館でしか選挙ができないのは、その場所が治外法権としてその国に登録をしてあるからではないか。LAの日米文化会館の一室も同様に登録がしてある。(現在は不明)また、在外選挙のことを次回の海外日系人大会で発表するのはどうかと提案。(公益財団法人海外日系人協会の評議員である若尾氏に依頼)

 若尾氏(日本):初めてのオンライン会議だったが世界中から集まってもらったことに感謝している。この会議に関しては議連にも報告する。今後も年に数回はこのような会議を行なっていきたい。