乳がんシンポジウム 上野貴之医師が講演

BCネットワークが開催

免疫作用について解説

 乳がんに関する最新の治療情報や早期発見の啓発活動を行う非営利団体「BCネットワーク」は26日午後1時から3時30分まで、NY日系人会で、第6回乳がんシンポジウム@イーストコースト・サウスを会場とオンラインのハイブリッド形式で開催した。 会場参加者10人、オンライン参加者27人の計37人が聴講した。

 このシンポジウムは、日本人女性の罹患率が高い乳がんについて正しい知識を深め、万が一罹患した場合に適切な対処ができるよう、基本的な情報と最新の医療情報を提供することを目的としている。今回は、がん研有明病院乳腺センター長・乳腺外科部長の上野貴之医師(57)が「乳がん患者さんひとりひとりに最適な治療を〜最新のデータが導く明るい未来〜」というテーマで基調講演した。次いで、聖マリアンナ医科大学病院放射線科IVR研究グループ・放射線科医のフォックス岡本聡子医師が「日米の乳がん画像診断の違い〜乳がん手術前、術後検診まで〜」と題して講演した。最後にBCネットワーク創立者・代表の山本眞基子さんが「転移性乳がんと共に20年〜それでも人生は輝く〜」と題した経験者トークを行った。ニューヨーク日本総領事館の松永直樹領事部長が後援団体を代表で挨拶した。司会はフジサンケイコミュニケーションズ・インターナショナル(FCI)キャスターの久下香織子さんが担当した。当日の講演内容は、BCネットワークのウェブサイトhttp://bcnetwork.orgでも視聴可能。

 講演の中で上野医師は乳がんと免疫の関係について説明した。「治りやすいと言われながら、いつ治るのか、治らないのか分からないのが乳がんの特徴だ」として、体内に異物が出現した時にそれを認知して排除するよう働く免疫が、自分の体内にもともとあったものからできるがんに効くのかという疑問に対して、「変異した蛋白質はもともと自分の体の中にあったものではないので免疫治療効果がある。がん細胞のスピードにブレーキをかけるのが免疫だ」と説明し、乳がんのタイプなどについて解説した。抗がん剤と免疫療法と手術が現実的に広く使われている日本の現状を紹介した。続いてフォックス岡本聡子医師が、40歳以上になったら奨励されているマンモグラフィについて解説し、トランプ政権になってケネディ保健相になりマンモグラフィの将来の保険適用が不透明になってきているとしながらも、自分から早期発見に努めることは大事で、仮に追加検査となっても、実際に生体検査となる率は2%なのでそれイコールがんになったことではないということ理解しておくと良いなどアドバイスがあった。

 会場からは日米の保険制度の違いや、治療に対するスピードの違いなどについての質問が出された。上野医師は、日本でもすぐ検査をした方が良い場合はすぐ再検査となるが、たとえば半年様子を見て、それからもし治療が必要と判断しても現状なんらその後に変化がない場合は、様子を見ることが多いと言う。BCネットワークの山本代表は、「乳がんが再発して20年以上になるが常に次の治療薬がどんなものなのかを調べて、新しい治療薬を使い続けることで今日まで元気で暮らしている。がんと関係ないことを考える時間を持つことが、明るい未来を導いてくれると思う」と体験談を語った。上野医師も「30年前と現在とでは治療薬の開発が大きく進んでおり、2018年に医学・生理学賞でノーベル賞を取られた京都大学特別教授の本庶佑さんの免疫の働きを抑えるブレーキ役となる物質の発見が、がんに対して免疫が働くようにする新たな治療薬の開発などに貢献した功績が大きい」と話した。