外国人登録を厳格化 グリーンカードに携帯義務

転居10日以内に住所変更届け必要

 ニューヨーク日本総領事館は9日、米国における外国人登録義務等の厳格化について在留邦人に「重要事項」として注意喚起した。

内容には4月11日以降、米国永住権(グリーンカード)を持っている者はグリーンカードを常時携帯する義務が生じるなどと記載されている。詳細は次の通り。

 米国において14歳以上の外国人に対する外国人登録及び指紋採取義務が強化される。米国査証取得時や入国審査時等に外国人登録及び指紋登録をせずに、30日以上米国に滞在している人は外国人登録が必要。

●18歳以上の外国人は、国土安全保障省(DHS)が発行する登録証明書(Iー94、就労許可証・EAD、グリーンカード等)を常時携帯する義務が生じる。●米国内で転居した場合は、転居後10日以内に米国市民権・移民局(USCIS)に住所変更届(Form AR-11)を提出する義務がある。●同義務に違反した場合には罰則が科されるので、各義務を遵守する。

1 外国人登録義務及び登録証明書の携帯義務

 4月11日以降、米国における外国人登録義務、登録証明書の携帯義務等が強化される。

(1)14歳以上の外国人で、米国査証取得時や入国審査時等に外国人登録及び指紋登録をしておらず、30日以上米国に滞在している者は外国人登録をする。ただし、ESTAでの90日以内の滞在を含め、米国への入国時に指紋登録を行い、フォームIー94(米国出入国記録)を発行している人、有効なグリーンカードを所持するなど合法的に滞在している人は、改めての登録は不要。

(2)14歳未満の子供を持つ親または法定後見人は、当該子が外国人登録していない場合は30日以内に登録をする。また、登録済の場合でも当該子が米国内で14歳の誕生日を迎える場合は、誕生日から30日以内に再登録(Form G-325R)する(14歳未満ですでに登録済の子供については、14歳になるまで再登録は不要)。

(3)18歳以上の外国人は、国土安全保障省(DHS)が発行する登録証明書(Iー94、就労許可証(EAD)、グリーンカード等)を常時携帯する。Iー94はウェブサイト(https://i94.cbp.dhs.gov/home)から確認・取得できる。紙にプリント、または端末にPDF形式で保存する。

2 登録義務違反の罰則

 4月11日以降、外国人登録義務等が厳格化され、14歳以上の外国人登録及び指紋採取、登録証明書の常時携帯、転居後10日以内の住所変更届出の各義務に違反した場合には罰則が科され、故意とみなされた場合は国外退去処分となる可能性があるので、各義務を遵守するようにする。

移民ビザ専門の弁護士が見解
「コピーや携帯画像でも良いはず」

 移民ビザを専門扱う日系法律事務所の加藤恵子弁護士の話「グリーンカードの常時携帯ですが、オリジナルでなければならないということは明記されていません。Iー94自体オンラインから印刷して所持する、または電子でも良いことになっていますから、グリーンカードもコピーや携帯で画像を保持でも良いはずです」と話す。

グリーンカード
「オリジナル」常時携帯か否か

 米国政府が発表した外国人登録の厳格化(1面に記事)について、ニューヨークの日系法律事務所で移民ビザを専門にしている加藤恵子弁護士は「グリーンカードの常時携帯ですが、オリジナルでなければならないということは明記されていません。Iー94自体オンラインから印刷して所持する、または電子でも良いことになっていますから、グリーンカードもコピーや携帯で画像を保持でも良いはずです。常時オリジナルを携帯していて紛失することの方が問題です。紛失した場合再申請をしなくてはなりませんし、失くしたグリーンカードで悪用される恐れもあります。永住権保持者としての証明としてForm I-551, Permanent Resident Card とは記載されていますが、オリジナル携帯とは記載されていません。また、非移民ビザ保持者の場合は、Form I-94, Arrival Departure Record とあり、ここでもオンラインから印刷とかデジタルとかも実際は記載されていない」と話す。

 本紙に問い合わせてきた読者の弁護士は「政府がグリーンカードのオリジナルを携帯すべきとは断定しておらず、オリジナルのカードの携帯を『想定している』ような曖昧な表現をしている」という。さらに「原本を携帯していると、財布などを紛失した場合、すぐに再発行するのは大変な作業になるという点を踏まえた上で、係員に止められた際に鮮明なコピーを提示すれば、係員はあなたのステータスを簡単に確認でき、拘束されることはありません」と助言する。

 ニューヨーク日本総領事館に本紙が問い合わせたところ、「在留邦人から百件には満たないが、相当数、数十件の問い合わせがあった。領事部では、本制度にかかる在留邦人からの照会に対しては、『オリジナルを携行することをおすすめする。ただし、本件は米国の制度であるので、これ以上の詳細については必要に応じて市民権・移民局など米国の関係当局にお問い合わせいただきたい』と回答している」という。

 この規定がアメリカの政府が決めたことであり、規定の文面には携行するグリーンカードがオリジナルでなくてもよいとか、悪いとかは明記されていないため、日本の政府の在外公館としては書かれていること以上には踏み込んだ回答はできないということだろう。建前としては総領事館が回答するように「オリジナルを携行することが望ましい」のは正論だが、現実的な問題は、弁護士が指摘するようにグリーンカードを入れた財布を紛失したりした場合、連邦職員の解雇が続く昨今、グリーンカードの再申請を移民局に出しても短期間で発行される保証はない。鮮明なコピーを見せる、または携帯電話のカメラで現物のグリーンカードの裏表画像を撮影して保存しておくことも考えられるが、今度は携帯電話を盗まれた場合にカード情報が転送されて悪用される危険性が紙のコピー以上に高まることも予想され、個人情報の管理にリスクが伴うことには変わりはない。ただ、コピーを入れた財布を無くした場合、悪用される危険はあっても少なくともオリジナルのグリーンカードは無事で失うことはない。個々の判断で最善の方法で対応するのが今のところ最良の方法のようだ。

 〈参考資料及びウェブサイト〉

●義務違反に対する罰則(How to Resister及びWhat to Expect After Registeringの項のCriminal Penaltiesを参照)(米国市民権・移民局)

https://www.uscis.gov/alienregistration

●2025年2月25日付の報道発表(国土安全保障省)

https://www.dhs.gov/news/2025/02/25/secretary-noem-announces-agency-will-enforce-laws-penalize-aliens-country-illegally

 その他、安全対策基礎データ(米国)も併せ参照。

●安全対策基礎データ(米国)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure_221.html

また、次のサイトを参考にする。 

●外国人登録規則、登録方法、申請書等(米国市民権・移民局)

https://www.uscis.gov/alienregistration

●外国人登録フォームと登録証明書(2025年3月12日付連邦官報)

https://www.federalregister.gov/ documents/2025/03/12/2025-03944/alien-registration-form-and-evidence-of-registration 

●登録証明書として認められるもの(上記3月12日付連邦官報の一部アップデート)

https://www.ecfr.gov/current/title-8/chapter-I/subchapter-B/part-264/section-264.1