心を雄弁に語るピアノの名手

ピアニスト

内田 玲子さん

 カルフォルニア州トーランス生まれ。4歳からドロシー・ワン先生指導のもとピアノを始め、大学入学までワン先生に師事する。「今日はこれだけ練習したんだからもう十分、と熱心でない時期もあった」そうだが、フィラデルフィアの名門カーティス音楽院ピアノ科に入学。同音楽院はフィラデルフィア管弦楽団の水準を満たす楽団員の養成機関をめざして1924年に設立された音楽大学で、少数精鋭、学生全員に奨学金が全額支給され、極めて入学が難しい音大として知られている。カーティス卒業後はニューヨークのマネス音楽大学にてマスター、ジュリアードにてアーティストディプロマを取得した。学生時代からコンサート活動を始め、聴衆を前に演奏することや他の音楽家と共演することで、ピアノの楽しさを実感したと言う。
 ソロピアニストとしてロサンゼルス・フィルハーモニー、サンタフェ交響楽団と共演したほか、チャンバーミュージックソサエティ・オブ・リンカーンセンターのコンサートツアーに参加するなど、室内楽演奏家としても情熱的に活動している。これまでに国際的バイオリニスト、ピンカス・ズッカーマン、ヒラリー・ハン、アン・アキコ・マイアーズらと共演。バイオリニストのジェニファー・コーと録音した「ストリング・ポエティック」は2009年度のグラミー賞(ベスト・チャンバーミュージック・パフォーマンス)にノミネートされた。現在はコロンビア大学にて教鞭をとっている。「弾くだけではなく、ピアノを教えることも私にとってとても有意義。幼い頃からピアノを弾いてきて、途中挫折しそうになったことや、それを乗り越えて継続してきた経験が役に立っていると実感しています」。
 映像作家の夫との間に9歳の娘がいる。娘が幼かった頃、隙間時間を見つけてピアノを弾いた。自分にとってピアノに向き合う時間の大切さを改めて感じたと言う。英語ネイティブの内田さんがインタビューには日本語で答えてくれたこともあるが、言葉で表現するのは苦手だとお見受けした。そんな彼女にとってピアノは言葉以上の表現ツールなのかもしれない。
 そして今年3月12日(木)、英国フィルハーモニック管弦楽団で活躍したチェロ奏者、花岡伸子氏と二人、カーネギー・ワイル・リサイタルホールにてコンサートを開催する。タイトルは「バッハからラフマニノフまでーチェロとピアノの名手」。プログラム4曲のうち、内田さんはラフマニノフ、シューマン、クライスラーを弾く。コンサートへの抱負は?の質問に「その曲の良さが伝わる演奏をしたい」とはにかみながら答えてくれた。(東海砂智子)

■チケットなど公演情報は次の通り。
www.carnegiehall.org/calendar/2020/03/12