マイセン流の技術習得して陶磁器に絵付け 菊池優子さん

デザイナー、アーティスト

 リモージョ・ボックスと呼ばれるフランスの貴族たちが昔愛用した陶磁器製の小物入れボックスを手にしたのは学生時代だった。金具がついていてきっちりと閉まる。薬の錠剤やつけぼくろなど、元々は細かなものを入れていた小箱だという。それを使って自分が何かを作り出し、世に送り出して人に喜びを与えるとはその時は夢にも思っていなかった。

 東京都出身で、慶應義塾大学法学部を卒業後、ドイツに本社がある世界規模の大手企業に就職。職場で貴重な経験を積む一方、「自分自身が創造し、人生の事業として捧げられるものを探し、他者に喜びをもたらすこと」を目指し始めた自分がいた。幼少期の記憶をたどり、自分は小さい時から絵を描くのが好きで、繊細で感性豊かな手芸や、装飾、芸術に深い興味を抱いていたことに気づいた。  

 2008年に陶磁器絵付けの芸術と出会った。これが画家としての活動の始まりとなった。絵付けの本の翻訳者が教室を自宅近くで開催していることも幸運だった。磁器絵付けを学び始めた瞬間から、美しい手芸を専門的に学ぶことに熱中し「プロになりたい」という思いは募った。その情熱は、かつてマイセンの画家だった著名な磁器アーティスト兼教師である故ウヴェ・ガイスラー氏が提供する最も厳しい専門コースに挑戦するまでに菊池さんを駆り立てた。Eメールを送った。1年先まで講義の予定が詰まっているが、たまたま1週間後に東京でセミナーがあると知った。ホテルのロビーで絵付けの技術を教えて欲しいと懇願すると、夏休み中の8月にドイツまで来れるならマンツーマンで教えようと言われ、会社に1か月の休暇届を出してドイツに飛んだ。初歩的技術からデザインや詳細な表現方法まで集中的に習得できたが、帰国3か月後にガイスラー氏が急逝、菊池さんは、特別な個人指導を受けることができた最初で最後の修了生となった。 

 現在ドイツに住む菊池さんは、シュツットガルトの工房で絵付けに励む。「女性にとって指輪は大切な思い出のジュエリー。同じ思いの人たちに喜んでもらえたらとても嬉しいです」と話す。(三浦良一記者、写真も)
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指輪姫の小さなお城

元マイセンのペインターに師事
ドイツからNYデビューした菊池優子さん

 母親からの大切な思い出だったり、ウエディングリングや自分へのご褒美だったり、女性にとって指輪は特別なラグジュアリーな装飾品だ。元マイセンペインター、故ウヴェ・ガイスラー氏に師事し、現在ドイツのシュツットガルトに住む日本人デザイナーでアーティストの菊池優子さん=写真=が、ニューヨークのピア61で8月3日から5日まで開催されたジュエリー展示会ミリー・ザ・ショー(MELEE)に初出品した。

 菊池さんは、フランスの貴族が愛用した陶磁器の無地の小物入れに伝統工芸の技術を駆使して手描きで絵付けし、世界に一つのリングボックスを作っている。「指輪姫の小さなお城」とも言えるボックスは、まさにアート作品だ。