心の叫びを書で芸術表現

書彩家

結 鶴さん

 アート・インキュベーションシリーズ3「STEPPING INTO A WORLD」が8月22日から27日まで、ギャラリーマックスNYで開催された。同展は、エミー賞放送作家の安達元一とNY在住キュレーターの佐藤恭子による展覧会第3弾。公募参加した176人から日本で活躍しているアーティスト18人の一人として今回参加した。会場でデモンストレーションも披露した。テーマは「書で人生を彩る、人とひとを結んでいく書」。山口県萩市出身。東京学芸大学教育学部を書道専攻で卒業し、在学中に師範免許を取得。「書によって人と人が結ばれていく」書の魅力を多くの人に伝えたいという思いから卒業後は書のイベント活動、ワークショップ、ライブパフォーマンスなど多方面においてフリーランスで活動してきた。結鶴書道教室を主宰し、学校書道教育にも講師として携わっている。伝統的な書から、自身の経験や思いを乗せて表現する「魂シリーズ」の書まで、芸術である書の可能性を追求し続けて創作を続けている。これまでの活動経歴を見るとハート・アート・イン・リスボンで日葡文化交流芸術賞(2016年)、2017年のミラノ「いとをかし展」作品展、台北「台日芸術博覧会」作品展示などの海外展ほか、銀座三越ギャラリーでの「岡田泰展」作品展示(2019年)や「書彩展 変わるもの・変わらないもの」展を主催(2019年)などパンデミック前まで精力的に活動を展開してきた。久々の海外展で初のニューヨークでのグループ展での参加となった。入選作品「深淵」は心の底から溢れ出る言葉を紡いだ作品。追憶、懺悔、自己肯定。書くことによって、心を動かすことへの喜び、生きる希望をも見出している。言葉が地から天に立ち昇っていくさまのようでもあり、逆に天から地に溢れてくる言葉の流れのようでもある。

 多数の受賞歴があるが、最近では2019年に国立新美術館で開催された「第6回躍動する現代作家展」で最優秀賞、2020年「優秀賞」 、昨年は「躍動する現代作家賞」を受賞している。書を使った創作活動がアートとして昇華する。それは自分の中の心の叫びを書に託した表現から新たな世界へ旅立つことを意味する。実力をいかに芸術作品として海外の美術家の目に止まらせていくか。描く作家とそれを見るものとの間で交わされる魂の音叉の共鳴以外にはないということを実感し、鶴のようにNYを飛び立っていった。

 (三浦良一記者、写真も)