NYで野外金属彫刻を作り続ける

ブルックリン・ボタニカルガーデンにThe Heart of the Tree展示

高氏 奈津樹さん

  ニューヨークで活動するアーティスト、高氏奈津樹(たかうじ・なつき)さんの野外彫刻がブルックリン・ボタニカルガーデンに展示されている。タイトルは「ザ・ハート・オブ・ザ・ツリー(The Heart of the Tree )」で、生命に溢れたとも傷ついているとも見える根を張った木、心臓、女性の姿をイメージした金属彫刻に、点滴または果実のような手吹きガラス彫刻が垂れ下がり、ドームの中に芽生える新芽に栄養を与えている。枯れゆく木は私たちを憂い、責め立てると同時に命の源であることに変わりはない。木も人間も周囲にコミュニティを形成し支え合っていることも変わらない。「自然を神格化擬人化する日本的価値観で育ったことも作品構想の根底にあることから、人間と自然との関係を様々な角度から語れる作品にしたかった」と話す。また「日本と歴史的に関連深い場所で今作を展示できることは意義深いです」と語る。展示名はBranching Out -Trees as Community Hosts-で高氏の他5人のアーティストの作品と共にブルックリン・ボタニカルガーデンで10月24日まで展示されている。この展示はAnkhLave Arts Alliance というアーティストをサポートする団体が企画し、キュレーターはセシリア・アンドレ(Cecilia Andr)が担当した。

 高氏さんは1982年東京都出身。中学、高校時代からアートの世界へ進みたかったが、美大への進学は親から許されず、とりあえずは普通に受験して早稲田大学第一文学部に進学し、文芸専修学科で小説家を目指したが、卒業後も小説では芽が出ず、小説の傍にアートでもと「お茶を濁すような生活」が続いた。25歳の時に、自分を束縛する環境に決別するため、単身ニューヨークにやってきた。自分らしく弾けたいという気持ちがあった。語学学校に通いながらマンハッタンのアート・スチューデント・リーグの存在を知った。大学ではないが、優れた教授陣と多くの芸術家を輩出したことで有名だ。そこで彫刻と出会い、野外彫刻を手がけるようになった。彼女が2014年に作った野外彫刻「ウインドウ」は、彫刻の内部と外部をブランコで体験できるアートでマンハッタンのリバーサイド公園に展示された後、その進化版もウエストチェスターのライビーチに2018年夏に展示されている。最近の展覧会は、ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク市立大学、亀山アートトリエンナーレ、韓国のCICA美術館、カナダのOeno Galleryで開催されるなど活躍が続いている。展示の詳細はhttps://www.bbg.org/visit/event/branching_out