ハロルド・プリンスの情熱胸に

ゴージャス・エンターテイメント社長 プロデューサー

吉井 久美子さん

 コロンビア大学で演劇界、舞台芸術界で次世代プロデューサー育成のためのメンタリング・プログラムとして運営されている「Tフェローシップ」がこのほどブロードウエーのレジェンドであったハロルド・プリンスの冠をつけ「プリンス・フェローシップ」と改名された。それを機にアドバイザーが13人選出され、その一人にゴージャス・エンターテイメント社長の吉井久美子さんが日本人として唯一人選ばれた。

 ハロルド・プリンスは、ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」のオリジナル・プロデューサーであり「オペラ座の怪人」の演出家として知られ、2019年7月31日に91歳で亡くなったブロードウエーの伝説的人物だ。

 吉井さんは2004年に宮本亞門演出でベストリバイバル作品賞を含む4つのトニー賞にノミネートされた「Pacific Overtures」(太平洋序曲)の上演時にハロルド・プリンスと知り合い、のちに彼の演劇人としての集大成を振り返るミュージカル作品「Prince of Broadway」(ハロルド・プリンス演出、スーザン・ストローマン共同演出、振付け)を手がけている。トニー賞選考委員。

 同大プログラムのメンターには、ディズニー・シアトリカル・グループのトーマス・シューマッカー社長やATGのアメリカのトップのクリスティン・カースキー氏、「ハミルトン」のプロデューサーのジェフリー・セラー氏ら錚々たるメンバーが名を連ねている。

 このプログラムは、将来演劇プロデューサーを目指す有望な人材の育成のためのスカラシップなどに使われ、世界の演劇業界の活性化と拡大を目指す。コロナ禍で閉鎖が1年以上も続くブロードウエーにあって久々に明るい話題の提供となりそうだ。

 吉井さんは、ゴージャス・エンターテイメントの社長のほか、ザ・ジョン・ゴア・オーガニゼーションの国際事業開発担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務める。また、在留邦人にはお馴染みのジャパンデー@セントラルパークの事務局長として、2007年の立ち上げ時からイベント企画と運営を行っている。2012年9月、内閣官房 国家戦略室により「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人に選出、また、16年9月号のフォーブス・ジャパンでは「世界で闘う日本の女性 55人」に選ばれている。吉井さんは「ハロルド・プリンスは生前、若いプロデューサーに自身の経験値を継承する喜びと重要性を話していました。ハルの遺産ともいえる、このプログラムのお手伝をさせていただけることを光栄に思います。ハルのパッションを引き継いでいければ嬉しいです」と話している。(三浦良一記者、写真は本人提供)