ミュージカル女優目指しNY留学

「トビタテ! 留学JAPAN」留学生
森川華子さん

 日本の文部科学省が官民協働で推進する留学キャンペーン「トビタテ! 留学JAPAN」。東京音楽大学声楽科に在籍する森川華子さん(22)は昨年、この奨学金を得てミュージカル修業にニューヨークに来た。2014年に始まった同奨学金は、次第に周知度も高まり教育や医療などの分野で留学する人は増えつつあるが、ミュージカル留学で交換留学の大学生は過去にいたが、大学が受け入れ先ではないケースは森川さんが第1号だという。約1年の留学終了を3月末に控え、ぜひとも多くの人に「芸術枠」で同奨学制度に挑戦してほしいと取材に応じた。
 同奨学制度では、「日本への貢献」が問われるが、芸術分野は具体的な答えが難しい。個人面談では用意した模範解答ではなく「小さい頃からミュージカル女優になりたくて、そのためだけにニューヨークに行きたい」と正直に熱意を伝えた。20分ほどの面談では50以上の質問が投げかけられ、「自己満足で行くんじゃない」という気持ちを固めることができたと話す。
 二十歳のお祝いに両親からプレゼントされたニューヨーク旅行で、個人レッスンを受けた先生から「どんなふうに歌いたいの? どんな歌手になりたいの?」と質問され驚いた。「上手に歌うことだけ考えてきて、そんなふうに聞かれたことがなかった」。もう一度ニューヨークで学びたいと決意した。
 留学初日からカウントダウンして、「今これを、というのではなく、将来につながることを」視野に、個人レッスンや講習を受けたり、オーディションや舞台芸術助手の体験をしたり、どん欲にあらゆることを吸収している。初めて海外で暮らし世界中の挑戦者たちに囲まれ、「音楽を学ぶには世界のさまざまな文化や価値観に触れることも必要」と肌で感じる。
 留学以前から「学生の公演や小さな発表会でも気づいてもらい、芸術をもっと気軽に、身近にしたい」と漠然と考えていたが、芸術があふれるニューヨークでその思いを強くして、トビタテ留学生同窓会のネットワークで相談したらITに強い仲間が得られた。違う分野の大学生と知り合えるのも同留学制度の魅力、帰国後の課題が明確になったと話す。
 1年前に答えに窮した質問に、「自分にしかできない、私だからこそできる表現方法で歌う」と、今ならはっきり言える。型にはまらず人の真似をしない表現方法をニューヨークでたくさん学んだ。卒業したら日本でプロを目指す。東京都出身。
 同事業は、2020年までに留学する大学生支援数12万人を(現在は約6万人)目指している。(小味かおる、写真・三浦良一)