大田区町工場 職人たちの履歴書2

SAP CHANO・著
マグノリア出版・刊

 『大田区町工場 30年目の履歴書』(2024年)の第二弾だ。前回は、写真家・SAP CHANOが 30年前に取材した東京都大田区の町工場の職人たちを再訪し、令和の今に至る姿と声を写真と文章でまとめたノンフィクション+写真集だったが、今回は、金属加工以外の職人たちにも幅を広げ、町工場の伝統の中に生き続ける現代の匠の顔27の素顔を捉えている。写真家としての視点で、職人の「手(技)」や「顔(表情)」、工場の機械・現場の息遣いが丁寧に収録されている。

 大田区は日本有数の中小町工場が集まる地域で、かつてのバブル期以降の経済構造の変化や後継者問題などを背景に、職人・工場のあり方が変わってきた。本書は、そんな時代の変化と職人たちの営みを「人の顔」、ポートレートで描く写真の記録としての価値 をさらに色濃く打ち出した人物レポート写真集だ。

 人間にも、時代にも、国にも、芸能人にも、一番輝いているピークというものが存在する。今回の第二弾で登場する技術者たちは、親の代から受け継いだ2代目、3代目の工作者たちが多い。親世代の多くは、昭和の日本の高度経済成長期にその高い技術力で日本の重厚長大の産業を下支えしてきた歴史がある。30年前の1995年に茶野氏がこの大田区の町工場を取材して、30年後に、ニューヨークタイムズの記事を沖縄の行きつけのなんちゃって日本食レストランで目にしたのが、写真レポ復活のきっかけだった。

 こちらで言えば、ハードウエアストアの棚に並んでいるような小さなボルトやナットから、日本の政府から注文を受けて原発や瀬戸大橋、高速鉄道のクッション、シリンダーの作成まで、ミクロン単位の精度で仕上げる高い技術が、町工場のひしめく大田区に点在している。その一軒、一軒を飛び込みで取材。100通の取材依頼メールで返信が来るのは3通あまりだったという。そのなかでの27人のポートレートと家族の成り立ちまで取材したヒューマンドキュメンタリーが、茶野さんの軽妙洒脱な文章と、本業である写真家としての腕前で1冊の記録写真集として再び多くの人の目に触れる。

 前回も書いたが、著者の茶野氏は1986年から91年までニューヨーク読売プレス社のカメラマン茶野邦雄として欧米取材やブルック・シールズのインタビュー写真などを撮影して活躍していた報道写真家だ。当時、ワンショット3万ドルと言われたNYで活躍した広告写真の第一人者、HASHI(故人)にもニューヨークで懇意にしてもらっていたようで、その後のアフリカのファッションメンズたちを写真取材したサプールシリーズで日本で大きな注目を集めた。2018年にはフランスのランス市から招待され、国鉄ランス駅で写真展も開催している。ライフワークは、覚悟の決まったカッコいい人たちを世界中から探し出して写真と文章で紹介することだそうだ。茶野氏自身の生き様もかなりカッコいい方の部類に入るのではないだろうか。この調子でライフワークとして続けて欲しい。何しろ写真が文句なく素敵なのだから。 (三浦)