NYシニア生活の喜び 大江千里

Senri Oe (Jazz pianist, Jazz composer)

Happy New Year!

 まだ実際に今は旧年中ですがすでに僕の気持ちは1月のど真ん中にいます。なぜならばツアーが日本であるからです。1か月かけて1月4日名古屋を皮切りに

2月1日熊本まで日本列島を走り抜けます。基本ホールコンサートをソロで。途中トリオでのコンサートもあり芦屋ルナホールとブルーノート東京でも3日間6ステージやります。こうして元気で音楽を演奏できる喜びを噛み締めながら今年も幕が開きました。(まだ旧年ですが。ひつこい?笑)

 65歳の旧年中は摩訶不思議なことだらけの体験の年でした。まず数年前から何度か体調に?を感じる瞬間があったのです。理由もなく悪くなるという。アメリカの主治医も「一度大腸スコープをやったほうがいい」と心配そう、保険に入ってないので、ぼくは日本に帰り専門医に全身麻酔で検査をしてもらったのです。案の定ポリーブが3つあり内視鏡で除去。そういうお年頃です。早めにわかって除去できてよかった。でもまたできるのでチェックは必要です。ところが、それだけでは終わらずにこっちが本筋、「フードアレルギーがある」ことが判明しました。お医者さん「突然、調子が悪くなることがあったでしょう?」僕「はい、いきなり下痢や嘔吐が起こりました。だからお酒もやめたんです」お医者さん「フードアレルギーがあります」僕「……」。

 アレルギーといえば幼少時期からダニ、ミルク、くらいだと思ってたのだが、実はアーモンド、カボチャ、じゃがいも、大麦、ピーナッツ、ピスタチオ、キドニー豆、白インゲン、寒天、オレンジ、柘榴、キャベツ、ラズベリー、ひまわりのタネ、白米、とうもろこし、麦芽、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ…、などあるある。強陽性のものは6か月くらい接種禁止。低〜中等度のものは4日に1回以上摂取しないなどが言い渡されました。

 どちらかというと健康に気をつけて、好きでもないアーモンドを一生懸命食べてたのだが、それあかんやつやーん? それで具合が悪くなった可能性も高い。消化不良、ゲップ、吐き気、胃炎、湿疹、頻尿など…、老化だけじゃなかったのねん。ぼくは人生初の「食べ物改革」を開始。ローテンションガイドをもらい免疫反応を沈めるために、原因食物を控えました。そして新たな食物アレルギーを防ぐために食物をローテーションで摂取するよう心がけ。

 2025年は食べることが根底から覆された年だったので、冷蔵庫に「野菜、穀物、豆、飲み物、フルーツ、

乳製品および代替食品、ナッツ種子オイル、シーフード肉卵」の円グラフ表を貼り、代わりの食物を見つけたらそこへ鉛筆で記入し、しっかり毎日睨んでそれを守って食生活をするように心がけました。

 とにかくかぼちゃとアーモンドがものすごい拒否反応だったようなので、ついつい「ヘルシーに買っちゃおう」とする自分を抑え、サラダに入ってるかぼちゃやフレークに注入されてるアーモンドにも注視し、なんだか数か月はものすごく緊張しながらの生活でした。ハロウインの時目に入るかぼちゃさえ「いっ」ってこわばりましたもん。しかしなんだかんだでだんだん気持ちがリラックスしてきて、たしかにNG食品を食べないと身体の調子もすこぶる良くて楽しくなり、数値の低い低ー中等度のものならばとちょこちょこ摂取するようになりました。だってあれだめこれだめは寂しすぎる。

 ちょっとまえにひどい症状の下痢嘔吐をツアー中に繰り返しそれからアルコール摂取をやめたのですが、おそらくアルコールというよりはこれらのNG食品が原因だったと思われます。しかしながら、せっかくお酒を飲まなくなってなんかこれもよかったので、6、7年前に辞めたタバコのように、軽い気持ちでお酒もとらないようになりました。なんだったんだってくらい平気でSoberに。

 しかしながら外食は続けてますので野菜やチキンの胸肉などをたくさん摂取できる店を選ぶように気を配り、前よりよく噛むように

なりました。

 同時進行で歯を治したり、朝晩ストレッチを始めたり、とにかくよく歩くようになりました。すると不思議なもので、気持ちがおおらかなのかピアノの練習も無理なくできるようになって、指の歪曲や弱い指の訓練も丁寧にやるようになり、少しずつピアノもまたうまくなってきたのです。(自分比較。)歯を変えると噛み合わせも変わり、口角を上げて笑うようになります。この意識がすごくよくて、てくてく歩いていても

いろんな人と短い会話をやるようになりました。

 そうこうしているうちに、9月6日の誕生日でなんとMedicareがスタートしたのです。これまで18年のNY生活、コロナワクチンで意識を失ったり、腹膜炎でやばかったり、なんどもERにお世話になり、保険も始めて辞めてを繰り返し、最後は保険がないままになってたのです。それがなんといきなりのMedicareの降臨。基本のA・BプランにC・DプランをくっつけてMedicare Officeの人と電話で話しながらなんとか自己プランを決め、「ぼくのシニア生活」がスタートしました。

 それからほどなく主治医のアポがあったのですが、無事終わって受付で毎回びっくりするような額を払わなくても「じゃね」「またね」と手を振るだけで帰れる喜びと達成感よ。あー、シニアなのだ!と街中に言いふらしたい!また、どうやらMTAもシニア割引があるらしい、と聞きバッテリーパーク近くにあるオフィスに出掛け写真を撮ってもらい、胸を張って割引で乗れる「OMNYカード」を持参するようになり、これによって、今まで行ったことのないアップステートへDay Trip、マンハッタンの中もスイスイ。感覚としては、Refillしようとしてもまだまだあるよ、ってかんじ。嬉しいのなんの。急にいろんな路線に乗って行動範囲が広がって。

 秋に妹と甥っ子が来た時も一緒にメトロポリタン美術館へ入場する時、「えっと、実は…シニアになった

んだけど、一昨日が誕生日だったんだ」と告げたら「ええ、じゃ、割引になるよ。いくら払いたい?」「え?どういうこと?」「あなたが決めていいのよ」「ほんとに?じゃ、30ドル(もちろん1人)」「オッケー、じゃシニア値引きで30ドルね、はい、領収書!」見るとどう考えても妹と甥っ子と僕の3人分がまとめて30ドル。

 「おじちゃん、すごい」甥っ子に褒められてなんか偉くなった気分。しかし人生ってほんとにあっという間に65年過ぎちゃうものなんですね。最近、こうして食を見直し、多少は運動をし、ピアノも英語もスロウだけれど努力し、ほんのすこしずつまた変化していく楽しみができました。僕の中でこの変化はきっと「80代になっても自分の足で歩けて楽しく音楽をやる」ための地道な準備や訓練なんだろうって思うようになりました。そしていまコロナ禍から書き溜めたnoteの原稿が1冊の本になります。1月19日、KADOKAWAから発売。タイトルは「ブルックリンの子守唄〜耳をすませば命の音が聞こえる。」です。

 恒例になったバードランドシアターも2026年は10月30、31日に決定。きっと一昨年の春に亡くなったぴーすがパパを守ってくれてるのかなと思います。

 皆様、新しい年も笑顔で参りましょう。今年も心からよろしくお願いします。

大江千里 元旦2026年