映像作家
ドキュメンタリー「Ainu-ひと」監督
ジャパン・ソサエティー(JS)で7月と8月の両月、「アイヌ・サマー・フェスティバルーアイヌの物語、文化、そして伝統」と題するイベントが開催された。北海道の平取町二風谷地区は住民約300人の約7割がアイヌの血を引き、アイヌ文化に関する施設が多くある事で有名だ。そんな平取町から総勢30人の文化継承者を2年がかりで今回NYに呼び寄せた。自身制作の映画を上映したり、伝統舞踊や刺繍、木彫などアイヌ文化を体験する10のプログラムを実施し、4日間でおよそ1000人のニューヨーカーが参加、会場は連日熱気に包まれた。(関連記事3面に)
同フェスティバルは、平取町出身でアイヌ初の国会議員となり、アイヌの伝統文化の継承に生涯を捧げた故・萱野茂氏の生誕100年を記念して同町とJSが「協働」開催したものだ。
映像作家の溝口尚美さんは、兵庫県出身でアイヌではない。2008年からニューヨークで世界の先住民族コミュニティーを訪れ、映像制作を教える事を目的とした非営利団体を運営していた時に、同僚から日本の先住民族について聞かれ何も答えられなかった自分が恥ずかしかった。そんな思いが、アイヌに目を向けるきっかけとなった。
母国の先住民族のことを知るために北海道を訪問。アイヌのコミュニティラジオ局があった平取町へ向かった。アイヌ語教室で出会った川奈野一信さんの厚意でその後、ホームステイをしながら平均年に一度の割合で通い続けた。その中から2018年に生まれたのがドキュメンタリー映画「Ainu ーひと」だ。19年に英語版も制作。これまで、世界中で10の映画祭に入選し、ブラウン大学やブリティッシュコロンビア大学などでの上映会やレクチャーも行った。2年前にロンドンのジャパンハウスで開催されたアイヌ文化紹介イベントを見て、いつかニューヨークでもアイヌ文化を紹介したいと思った。その夢を今回実現に漕ぎ着けた。
「平取町の若い世代が今回来米して、本当に生き生きと自分たちの文化に誇りを持って舞台に立つ姿がとても誇らしかった。2019年に日本政府が新しい法律を施行した時に手を挙げて会社を作った事も今の文化継承活動にとって良かったと思う。例えば踊りだけしていた人が、アイヌ語や工芸など他の分野でもスキルを磨き始めるなど、活気は行く度に高まっていると感じます。舞台にはアイヌの文化に誇りと自信を持って楽しんで伝えている姿があった。まさに、私はこれをニューヨークで見たかったんです」とジャパン・ソサエティーの前で満足そうな笑顔を見せた。
(三浦良一記者、写真も)

