アメリカの原風景に出会う 八神純子が旅するルート66 (2)

 モハーヴェ砂漠にあるモーテルを早朝に出発した。砂漠を抜け、ブラック山脈の山道にかかると、ベージュやグレーに近いモノトーンだった風景は、深い赤やオレンジ帯びる切り立ち、とがった岩峰に囲まれていく。巨大なサワロ・サボテンのシルエットが朝陽に浮かび上がるとアリゾナ州に入ったことを実感する。西部劇の映画の世界そのものだ。 

 しばらく走ると、広い道路を塞ぐようにウロウロする動物達がいる。ロバだった。車が近づいてもどく様子もなく、まるで「よけるべきはあなたたちでしょ」と言わんばかり。そこでこちらが徐行すると、車に近づいてきて窓から頭を突っ込んでくる。なんて愛嬌のあるロバ達なんだ!!とびっくりしてしまう。

 ここはオートマン。その昔ゴールドラッシュで栄えた街だ。ロバ達は金鉱山採掘で運搬などに使われていたが、今は野生化し、昼は街に降りてきて観光客を楽しませては食べ物をもらい、夜は山に帰るのだそうだ。賢い。

 突然、発砲音がした。振り返ってみるとカウボーイ二人が銃を向け睨み合っていた。何やらその一人が相手の奥さんにちょっかいを出したらしい。言い争う声のボリュームが上がるやいなや「バーン」という音とともに一人が地面に倒れる。観光客向けのガンファイトショーとは知っていても、やはりどきっとしてしまう。ショーが終わってチップを渡すと撃たれて倒れたカウボーイもムックリ起き上がり、満面のスマイル。記念写真に納まってくれた。

 オートマンからの峠道は、ディズニー映画「カーズ」の中で、主役のライトニング・マックィーンがレースをした山道のモデルとされた道。険しいくねくね曲がった道を走り抜けるとルート66全盛期に賑わったクールスプリングスに着いた。旅人達が「魔の山越え」を控えた最終給水、給油所となっていたガソリンスタンド、クールスプリングススタンドは今でもその頃の景観が保たれ、観光スポットになっている。

 「マザーロード」の風景や当時の雰囲気、施設を守りながら、一緒に生きている人たちを見ていると、私が「アメリカってこういうところかな」と抱いていた原風景に出会えている気になる。この旅は私がアメリカをもう一度知る大切な時間になりそうだと思えた。(やがみ・じゅんこ、シンガーソングライター、カリフォルニア州ロサンゼルス在住)