NYでボクシング通して人間育成目指す  荒川泰次郎さん

 マンハッタンのソーホーにあるボクシングジムWTF。リングの上ではヘビー級のボクサーがスパーリングをしている。TRAIN HARD FIGHT EASY (練習は厳しく、勝負はたやすく)と書かれた看板のあるフロアに荒川泰次郎さん(40)の姿があった。プロデビューを目指す日本人ボクサーにトレーニング指導中だ。

 荒川さんは、14歳、中学2年の時に九州学院高校のボクシング部に入部した。高校時代に九州ライト級チャンピオンになり、福岡大学時代は同級2連覇を達成。30歳の頃、兄・真一さんが東京に開設したボクシングジムでトレーナーとしてのキャリアをスタートした。4年前、36歳の時にニューヨークへ渡り、マイク・タイソンを輩出したブルックリンにある名門ボクシングジム、グリーソンズジムでプロデビューした。

 しかし渡米前に自転車事故で骨折した右手首の2回の手術でドクターストップとなり、勝っても負けても1回限りの試合許可を医者からもらってライト級でデビュー戦。しかし1か月前に右利きと分かった対戦相手が本番では左利きだった。距離が噛み合わなくてヒットせず、3ラウンドKO負けで現役を引退した。以降はトレーナーとしての経験を活かし、ボクササイズを通じた日米文化交流に取り組んでいる毎日だ。

 ボクシングの師匠は兄だ。日本3位、九州チャンピオンの姿を見て中学時代から憧れてプロボクサーを目指したが、大学卒業後、一旦は地元九州の企業に就職した。縁があって24歳で上京し、俳優活動を開始した。27歳で映画『Her Mother』に準主演として出演し、スポーツ報知に掲載、全国で舞台挨拶を行う。28歳で舞台『円盤』にて初主演。その後、舞台『青の祓魔師』(志摩柔造役)に出演。35歳頃にはドラマ『相棒』に犯人役で出演、『ドロンジョ』、映画『オズランド』『アンダードッグ』など、映像作品にも多数出演し、俳優業でも頭角を表しつつあった。しかし同時に俳優の世界で生きていくしがらみの多さに、このままでは、役者としてもボクサーとしても自分を見失うかもしれないという不安に駆られた。「自分を変えたい。芝居している時に固定概念が強くて自由を得るのはNYに思えた。自分の人生を変えるために実際に来てみたら、本当に自分が変わった。全く周りの目も気にしなくなったし、今の自分は自信の方が不安よりも強いです」と笑顔を見せる。

 荒川さんが指導しているボクササイズクラス(Eメール[email protected])はいま生徒が50人ほどいて約半数が女性と子供だ。「ボクシングでチャンピオンを育てるより人間を育てる方に気持ちは向いてます。ボクシングってどうしてもハードルが高いと思うかもしれないですけど僕のは楽しくてハードルは低いです。遊びながらやれるボクササイズ、笑いながらゲーム感覚で楽しんでくれてます。みんなが思っている以上に怖くないし、達成感もあり、ちょっときついくらいが気持ちよくて、それが僕のTYボクシングスタイルです」と「拳闘はカッコイイ」と書かれたTシャツを見せて爽やかに笑った。将来は、日本かニューヨークでボクシング・フィットネス・スタジオを構えるのが夢だ。 (三浦良一記者、写真も)