生還不可能な命令

Top Gun: Maverick

 1986年の初上映以来実に36年ぶりに続編が帰ってきた。主演のトム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた出世作で、続編もジェット機の操縦を自ら行う徹底ぶりがリアルな迫力に輪をかけている。

 ストーリーは前作から時が流れ、米海軍のエリート飛行士訓練校に、かつて天才パイロットと呼ばれたマーヴェリック(クルーズ)が教官として帰ってくるところから始まる。生徒の中には、彼がかつてタッグを組み、訓練中に命を落としたパイロットの息子もいた。父の背中を追いかけてきた彼は、マーヴェリックに対し恨みを抱いていたが、生還不可能に近い敵地爆破命令を成功させるための過酷な訓練と任務全うの中でお互いを理解し合う人間ドラマに仕上げている。

 ヒロインのペニーを演じるジェニファー・コネリーとのラブロマンスも前作のケリー・マクギリスに引けを取らない存在感。そして、ライバルパイロットで互いに切磋琢磨したアイスマン(ヴァル・キルマー)がその後海軍で出世した海軍提督を演じ、トップガン史上最高のパイロットでありながら、常識破りな性格で組織から追いやられたマーヴェリックを庇(かば)い支える。36年前にオリジナル作品を見た観客にとってはまさにアイスマンとも36年ぶりの再会となるわけで、映画の中の時間の流れと観客の四半世紀以上にわたる人生とをオーバーラップさせる感慨深さもあり、27日の全米公開初日、タイムズスクエアの映画館には、今や中高年となったファンが大勢詰めかけた。

 空中戦も36年前とは格段の進歩の差があり、機体の性能向上は肉体の限界への挑戦でもあることを描く。コロナのパンデミックで劇場公開が5回も延期され満を持しての全米公開。時はおりしもロシアとウクライナとの激戦が繰り返される真っ只中だけに、戦闘機パイロットの人間ドラマがより現実感を持って迫ってくる。2時間21分。監督・ジョセフ・コシンスキー、音楽はレディーガガほか。(PG)(三)

(写真)トップガンの教官マーヴェリック(クルーズ)Photo:Paramount Pictures


NY市内の主な上映館

■Regal Cinema  247 W 42nd St, New York

■AMC EMPIRE25 234 W 42nd St, New York

■AMC 34th Street 14 312 W 34th St, New York,

■AMC Village 7 66 3rd Ave, New York