30作品を一挙公開
第一弾はジャパン・ソサエティーで9日から
『浮雲』など林芙美子の作品6作の映画化作品も
生誕120年を記念
日本映画の第4の巨匠・成瀬巳喜男監督の30作品からなる回顧展「Mikio Naruse:The World Betrays Us」が5月9日から6月29日まで、ニューヨーク市内の2会場にて開催される(共催:ジャパン・ソサエティー、メトログラフ、国際交流基金ニューヨーク)。
20年ぶりとなるニューヨークでの大規模な作品紹介展で、成瀬監督の生誕120周年を記念し、希少な輸入プリントのみで上映する。第1部は9日から31日まで、ジャパン・ソサエティー(東47丁目333番地)にてジョン・アンド・ミヨコ・デイヴィー・クラシック・フィルム・シリーズとして、第2部は6月5日から29日までメトログラフ(ルドロー通り7番地)にて上映される。
シリーズの見どころには、女性作家・林芙美子の作品6作の映画化作品(『浮雲』『晩餐』『雷』『妻』『晩菊』『放浪者の手帳』)に加え、過去の回顧展で未公開の戦前作品『朝の並木道』『女の悲しみ』『誠実』で、ニューヨーク初上映となる。
(写真上)『女が階段を上る時』When a Woman Ascends the Stairs © 1960 Toho Co.,Ltd.(1960年)
成瀬巳喜男監督の作品回顧展


© 1954 Toho Co., Ltd




ジャパン・ソサエティ、メトログラフ、日本財団ニューヨークが共同主催する、日本映画の第4の巨匠・成瀬巳喜男(1905〜1969年)監督の回顧展「ナルセ・ミキオ:The World Betrays Us(世界は我らを裏切る)」が市内2か所の劇場で開催される。2部構成の同シリーズは、成瀬のスタジオ時代を代表する作品群をニューヨークで20年ぶりに大規模に紹介するもので、彼の生誕120周年を記念し、日本から輸入した希少なプリントのみで上映。第1部は9日から31日(土)まで、ジャパン・ソサエティー(東47丁目333番地)にて、第2部は6月5日(木)から29日(日)までローワーイーストサイドにある劇場メトログラフ(ルドロー通り7番地)にて開催される。
同シリーズでは、女性作家・林芙美子(1903〜1951)の6作の映画化作品(『晩餐』『雷』『妻』『晩菊』『放浪者の手帳』)のほか、さらに過去の回顧展で未公開の3つの戦前作品『朝の並木道』『女の悲しみ』『誠実』がニューヨーク初上映される(1面に記事)。
ほぼ40年にわたるキャリアで89作品(うち68作品が現存)を遺した成瀬は、松竹でキャリアをスタートさせたが、同社のスター監督である小津安二郎に機会を奪われたことに不満を抱き、新たに設立されたPCL映画製作所(現在の東宝)に移籍。成瀬の旧友で東洋の巨匠として知られる黒澤明は「成瀬三喜夫のスタイルは、表面は穏やかだが、その深部には激流が流れる大河のようなものだ」と評している。溝口健二監督や小津安二郎監督と同時代を生きた成瀬は、スタイルの控えめさと現代日本の女性たちの経験、社会的地位を正面から描いたメロドラマを通じて、同業者と批評家から称賛を受けた。特に、下層中流階級を題材にした「下層映画」ジャンルにおける作品が評価された。サウンド映画『妻よ薔薇のやうに』 (1935年)で始まり、女優たちから尊敬され憧れられる「女性の監督」として、戦前のスターである千葉早智子(成瀬の元妻)、原節子(『食事』『山の音』)、田中絹代(『母』)、杉村春子(『晩秋』)、 そして彼と17回共演し、彼の黄金期の傑作『雷電』『浮雲』『流』『女が階段を上る時』の4作品で共演した高峰秀子など、数多くの女優たちと共演した。
31日(土)午後6時30分からは『The Cinema of Naruse Mikio: Women and Japanese Modernity』の著者で映画学者のキャサリン・ラッセル(カナダのコンコルディア大学メル・ホッペンハイム映画学部特別教授)による講演が行われる。入場無料だが要事前予約。
チケット・詳細はジャパン・ソサエティーhttps://japansociety.org/film/mikio-naruse-the-world-betrays-us/、メトログラフhttps://metrograph.com/category/mikio-naruse/の公式サイトを参照する。
上映作品ラインナップ
ジャパン・ソサエティー
・5月9日(金) 『乱れ雲』(1967年)(オープニングナイト)レセプション
・10日(土) 『まごころ』(39年)、『 女の悲しみ』(35年)、『妻よ、バラのやうに』(35年)
・22日(木)『秀子の車掌さん』(41年)、『乙女ごころ三人姉妹』(35年)
・23日(金) 『あらくれ』(57年)、 『放浪記』(62年)
・29日(木) 『妻の心』 (56年)、『妻』(53年)
・30日(金) 『稲妻』 (52年)、『夫婦』(53年)
・31日(土)『 銀座化粧』(51年)、『 秋立ちぬ』(60年)、『乱れる』(64年)
メトログラフ
『朝の並木路』(1936年)
『鶴八鶴次郎』(38年)
『はたらく一家』(39年)
『旅役者』(40年)
『めし』(51年)
『おかあさん』(52年)
『山の音』(54年)
『晩菊』(54年
『驟雨』(56年)
『流れる』(56年)
『鰯雲』(58年)
『女が階段を上る時』(60年)
『娘・妻・母』(60年)
『女の中にいる他人』(66年)
『乱れ雲』(67年)