服部愛生代役果たす オペラ「白狐」

米国初演にNY喝采

 5月2日マーキンコンサートホールで米国初演のオペラ「白狐」が開催された。主演の田村麻子が体調不良のため公演1週間ほど前に降板したことで主役の白狐・コルハ役と人間の女・葛の葉の一人二役は、同じニューヨークに住むオペラ歌手の服部愛生(はっとり・まなみ)が代役を務めた。

(写真上)舞台終了後にステージから客席に挨拶する出演者たち

降板した田村(左)と代役を果たした服部(右)

 同作品は日本近代美術の父と称される岡倉天心が、1906年に名著『The book of tea (茶の本)』をNYで出版し1913年にはボストンで英文戯曲The White Foxを発表するが、同年他界。長らく作曲されずに幻のオペラとなっていたこの作品を、2013年に指揮者・作曲家の平井秀明氏が日本語台本として甦らせ曲をつけ、オペラ「白狐」として日本で上演。2020年にはNYで米初演が予定されていたが、コロナ禍で中止となった。

 平井は「7度目の正直での公演は、奇跡だった。本当に大変だったが、これを機会に次回はもっと大きな劇場で再演できたら嬉しい」と公演後語った。

 降板した田村は、母親に付き添われ客席2階最前列から身を乗り出して終始ステージを見つめていた。「最後までハラハラドキドキでしたが、短期間で新作オペラを暗譜し、自分のものとしてくれた服部さんに感謝の思いでいっぱいです」と公演後のレセプションで服部を抱きしめた。

 服部は「大変でした。出来ですか? 自分では70点でしょうか」とギリギリの合格点をつけたが、本業の歌はともかく正味10日で新作オペラのセリフを覚えるのは並大抵のことではなかったようだ。アクション監督兼助演は女流殺陣師の香純恭、NYの子供達による風の環合唱団、現地邦人の合唱団なども加わった。ステージに映し出されたセッタンジェリあつきの迫力ある絵が舞台を忘れ難いものにした。     (三浦)