ホイットニービエンナーレ幕開け、日系含む75人の作家ローテック多し

 アメリカン・アート・シーンの最先端を紹介するホイットニー美術館のビエンナーレが14日、開幕した。同館キューレーターのウジェコ・ホックリーとジェーン・パネッタ2人のキューレーションによるものだ。日系の作家1人を含む75人の作家による作品がロビーギャラリーを含む、3階、5階、6階の4つのフロアに分かれて展示されている。いろいろな素材を使ったインスタレーションやファブリックを使った巨大アートが多く、テクノロジーに驚かされるようなハイテックなものよりも素材やアーティストの手で作られたローテックな作品も多い。アフリカやプエルトリコ、南アメリカ出身者を含む、多種多様なアーティストの作品が展示され、年齢層幅広く20代から40代以下の作家も多く見られる。
 ドイツ生まれの日系人作家、江沢コウタによるビデオアニメーション作品と水彩画作品は、警察によるアフリカでの黒人に対する差別に対し、NFLの選手がゲームの前に膝をつき抗議をした時の様子をアニメーション化。他にも人種やアイディンティー、それによる社会問題などに取り組んだ作品が目立つ。
 数多くの人が足を止めていた部屋には、オーガスティナ・ウッドゲートによる「ナショナルタイムズ」という題名のコンセプチュアルアートが展示されていた。学校や工場によくある銀の淵のついた時計が壁に並べられ、時を刻んでいる。「マスタースレーブ」という構成で知られるシステムで部屋の反対側にある機械で調整されている。いわゆる支配者と支配されるものの関係を見せつけさせられる。ウッドゲートはこの時計の分針にヤスリ紙を取り付け、文字が徐々に消えていく仕掛けを作る。確実だと思えるこのシステムも時代とともに無くなっていくということを知らしめるとともに、多くの疑問を心に投げかけてくれた。
 75人の作品がたくさん展示されていて、数だけでも圧巻だが、展示自体もうまくスペースが取られていて、ゆったりと鑑賞することができる。(城林希里香、写真も)

■入館情報=同館は午前10時30分から午後6時まで(金・土曜は10時まで)、火曜休館。入館料は大人25ドル、シニア・学生18ドル。18祭未満は無料。金曜7時からは任意寄付制。

Whitney Museum
of American Art
99 Gansevoort St
Tel:212-570-3600
www.whitney.org