情報の大切さ

コロナ時代の帰国受験 第1回 田畑康

 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内首都圏では3月上旬から多くの学校が臨時休校となり始めました。その後世界規模のパンデミックになることなど夢にも思わず、私たち学習塾業界では「教え子たちの受験が終わった後でよかった」という声が上がりました。「よかった」というコメントは、コロナで多くの犠牲者が出ていることを考えると不謹慎な表現ではありますが、送り出した受験生の進学先が決まった安心感から出てきた正直な思いであったことは間違いありません。

 もし、コロナの感染拡大が受験期である1月頃から始まっていたらと思うと、本当にぞっとします。

 10月現在、あれから半年以上が過ぎますが、残念ながら今年送り出す受験生を安心させる情報は揃っていないのが現状です。

 先月中旬、私が校長を務める早稲田アカデミーニューヨーク校では毎年恒例の「帰国生入試出願ガイダンス」をオンラインで実施いたしました。受験を控えた小6・中3受験生および保護者向けの、願書の書き方や面接試験対策を紹介するイベントなのですが、今年は非受験学年の保護者のオブザーバー参加も目立ちました。さらにはオンライン参加の気軽さもあってか、通塾圏の方だけでなく、マンハッタン、ニュージャージー州、ワシントンDC地区、ペンシルベニア州、カリフォルニア州、オレゴン州、ジョージア州、チリからの参加もありました。私どもの持つ「情報」がとても大きな意味を持つものだとあらためて認識し、気が引き締まった思いです。

 このコロナの時代、「オンライン」がとても大きなキーワードになっています。国内の私立中学・高校は、休校期間中にオンライン授業を速やかに提供できたかどうかが大きな話題になりました。特に、大学受験を指導する進学校は合格実績すなわち進学指導を大きな「売り」にしてきましたが、これからは休校中や再開後の対応も志望校選定の材料になってきたということです。マスクの着用やソーシャルディスタンスといった生活スタイルの変化とともに、学校生活の送り方、すなわち学校の選び方も大きく変わってきているといえます。

 次回以降、今年の受験生だけでなく、来年度以降の受験生とそのご家族にも参考にしていただきたい「帰国受験への取り組み方」をお届けいたします。

田畑康(たばたやすし)
早稲田アカデミーニューヨーク校校長。海外生・帰国生指導歴15年。自らも帰国生(オーストラリア、マレーシア)であった経験を生かし、「合格のその先」を見据えた指導を心掛けている。