5月下旬からオンライン申請が条件付で可能に
国内で進むデジタル化
2015年以前の出国者不利に
5月下旬から、国外転出者向けマイナンバーカードのオンライン申請が開始される。それに伴い在ニューヨーク日本国総領事館の窓口での申請については、一部を除き原則終了となる(本紙先週号既報)。なお交付手続き(カードの受け取り)については、引き続き領事窓口で行われる。オンライン申請の導入に伴い、申請から交付までの期間が短縮される見込みだ。この日本国内で進んでいるマイナンバーカードの普及に伴い、現在海外に住んでいる日本人(日本国籍所持者)は、マイナンバーカードを所有している人と所有していない人との2種類に分かれている。米国のソーシャル・セキュリティー(SS)ナンバーと似た機能を持つこの日本のマイナンバーカードだが、これがないと海外で暮らす上で何か不便なことがあるのだろうか、それともカードがなくても海外生活自体には支障がないのか、もし問題になるとしたらどんなことか、関係者に話を聞き現状を整理してみた。
2024年5月27日の改正マイナンバー法の施行により、同日以降、国外転出後もカードの継続利用が可能になり、海外在住者でも新規の申請が条件付きで可能になった。海外居住者が取得できる条件とは、日本国籍を持っていること、2015年10月5日以降に国外転出していることである。つまり、条件が揃えば日本人(駐在員、留学生など長期滞在者、永住者)が取得できる。
ニューヨーク総領事館によると、海外在住日本人が海外からマイナンバーカードを申請できるかどうかの判断は、「2015年10月5日時点で日本に住民票があったか否か、もしくは同日以降一度でも日本で住民登録をしたか否かによります。マイナンバーは住民票を持つ全ての人に付与される番号であり、住民票に基づいて一度付番されたマイナンバーは、住民票を移動したり、国外転出しても原則として生涯変わることはありません。2015年10月5日より前に国外に出て、一度も日本で住民登録をしていない方がマイナンバーカードを取得するためには、一時帰国の際に、日本国内で住民登録をして、まずは個人番号(マイナンバー)を取得する必要があります。ただし、原則として住民登録は居住の実態を伴っている必要があり、自治体によっては1年以上の滞在を前提としていますので、マイナンバーカードの取得のためだけに住民登録が可能かどうかは、各地方自治体に直接お問い合わせください。」と言う。では、マイナンバーカードを所持していない場合のデメリットはどんなことが想定できるのだろうか。
(1)日本の行政手続きのデジタル化への後れ=税金の確定申告、マイナポータル、各種証明書のオンライン取得などが今後「カード前提」となっていく流れにある。(→マイナンバーカードがあれば手続きの簡便化が可能)
(2)医療(マイナ保険証)との連動=日本では紙の健康保険証が廃止方向。日本の健康保険に加入している人は一時帰国時の受診に影響。マイナンバーカードがない場合は、加入している健康保険組合から資格確認書を発行してもらう必要がある。(→マイナンバーカードがあればそのまま保険証として使用可能)
(3)本人確認手段の不足=日本における銀行口座の開設、不動産契約、電話などの民間の各種契約・サービスにあたって支障が生じる可能性がある。
(4)将来的な制度統合=今後想定されているものは、運転免許証との一体化、在外公館における各種領事手続きのオンライン化、戸籍・パスポート連携など。(→マイナンバーカードを持っていることで、様々な手続が簡便になる可能性がある)
在外選挙制度と相反関係
住民票の有無で現在施行
日本国内で進むマイナンバーカードが、海外に居住する日本人にとってどのような影響があるのか、とりわけグリーンカードを持っている米国永住者が注意しておかなくてはならない点について1面で報じた。
そして海外の在住者にとって重要なのは、在外選挙制度とマイナンバーカードの関係だ。在外選挙は日本の住民票を抜いて海外に転出した人が「在外選挙人証」を取得して投票できる。将来的にインターネット投票を導入することになった場合の本人確認をマイナンバーと紐付けする案が出ているが、そうなると海外在住有権者の中でネット投票できる人とできない人が出てしまう状態になる。この点については、日本国民としての投票権に不平等が生じ、憲法15条(選挙権の平等)上問題になる可能性もあるため、ワンタイム(ID)パスワードの導入、在外公館投票、郵便投票の継続、希望者だけネット投票ができる選択肢とするなどマイナンバーカードを持たない有権者が制度から取り残されないように配慮されるものと見られる。
ないと民間サービスから
取り残される将来的懸念
まとめると、企業の駐在員とその家族、留学生など、将来日本に帰国することを前提として海外で暮らしている人は、マイナンバーカードを持っていた方が便利であり、カードがないと不便・不利益を被ることも有り得るので、2015年10月5日時点で日本に住民票のあった人はカードを取得した方が良いと言える。また、米国永住者でも、2015年10月5日以降に国外転出した人はマイナンバーを付与されているので、希望すれば取得が可能である。
2015年10月5日以前から、米国に住んでいる永住者でも、日本に住民票を残し、住民税などの納税義務を果たしていれば「住民票がある=マイナンバーがある」のでマイナンバーカードを取得できる。2015年10月5日以前から米国に住んでおり、同日以降一度も日本で住民登録をしていない場合は、一時帰国した時に住民登録をすれば、マイナンバーカードを申請することができる。ただし、住民登録は居住の実態があることを前提としているため、マイナンバーカードのためだけに住民登録が可能か否かは、市区町村役場に確認する必要がある。また、日本に居住している実態がないのに住民票だけ残していると税金等の負担が生じるので、再び米国に戻る際には国外転出届を出す必要がある。
従って、日本で住民票を一度も入れたことのない日本人に対しては、前述のように日本政府は海外在留邦人が取り残されないように制度上配慮していくとしても、マイナンバーカードがないと日本国内の民間サービスのデジタル化から取り残される危険性があると言えそうだ。今後は日米どちらに軸足をおいて生きるのかがさらに問われそうだ。

