編集後記

編集後記


 みなさん、こんにちは。ロサンゼルスにある全米日系人博物館が6月18日、第二次世界対戦中にアメリカの日系人が強制収容されたマンザナー国定史跡やミニドカ国定史跡を含む国定史跡や国立公園において「訪問者にアメリカ史を批判する内容とみなされる情報」を報告するよう促す標識を設置したことを非難する声明を発表しました(今週号1面)。同博物館のアン・バロウズ館長兼CEOは「これらの指針は、公園管理者に、アメリカ史をおとしめるものと判断された標識、展示、映画、その他の一般公開コンテンツを特定し、注意書きを付けることを求めている。これらはいずれも、現政権のより広範で継続的なキャンペーンの一部であり、多様性と民主主義の基盤となる原則を解体し、現政権が好ましいとする歴史解釈に反する歴史的な叙述を制限し、有色人種や女性、LGBTQIA+、その他のコミュニティーの貢献をアメリカ史から抹消する目的を有している」と強く非難しています。直接的にマンザナーが反米史跡であると決めつけてレッテルを貼った訳ではないようですが、そういう標識を立てること自体が、反米思想の芽を摘む行為としての歴史的検閲、政治的イデオロギーへの圧力であるとして非難したのでしょう。同博物館が、日系アメリカ人の経験を共有することによって、アメリカの民族的・文化的多様性への理解と認識を促進し、日系人の戦時強制強制収容の苦難から得た教訓が忘れられることのないよう公民権の擁護を目的とする中心的な存在として活動をしている団体として当然のこととして声を上げたということでしょう。「嫌なことはすぐにその場で嫌だ」と言わないと「黙認した」とみなされるのがこのアメリカです。間髪を入れずに反論することは大切なことです。このことは、特に他のメディアでは取りあげていないようですが、在米邦字紙としては見過ごすことはできない出来事の「記録」として今週号で記事化しています。ロサンゼルス市リトル東京で今も開業する東洋宮武写真館のアラン氏が、彼の祖父がマンザナー収容所で撮影した有名な3人の少年の写真の使用を許可してくれました(もちろん有料ですけど)。この記事にはこの写真しかないと即、電話して入手できたのはラッキーでした。何にもできませんが、こうやって伝えることができただけで今週号は自分としては二重丸でした。独立記念日を前に政治、経済各方面で日米関係にとって色々な大きなニュースが並んだ1週間でしたが、小さな独自記事で今の世相を切る、そんな新聞の存在でうちはいいと思ってます。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)