発給停止を撤回

米国留学ビザ

全米17州が提訴
オンライン授業可

 トランプ政権は14日、留学生へのビザ発給を制限すると発表した規制を撤回した。新規則は6日に米移民・関税執行局(ICE)が発表、9月からの新学期にオンラインのみを履修する留学生には、F1(一般学生向け)とM1(職業訓練プログラム受講者向け)のビザを発給しない方針を打ち出し、すでにビザを取得していても、オンライン授業だけを受ける留学生は出国しなければならず、留まるには対面授業を行う教育機関に編入しなければならないなどとしていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため多くの大学や教育機関が9月以降もオンライン授業を継続すると発表しており、新学期からもすべての授業をオンラインで行うと発表していたハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が8日、新規則の一時差し止め命令を求める訴訟をボストン連邦地方裁判所に起こし、12日にはイエール大学やスタンフォード大学、メリーランド州立大など59の大学が両大学を支持する法廷助言書を提出した。

 州も動き、カリフォルニア州のザビエル・ベセラ司法長官は9日、学生に対面授業への出席を強いる新規制は多くの人々を感染リスクにさらす恐れがあるとして、差し止めを求めトランプ政権を提訴した。同州では2019年時点で留学生が約16万2000人いる。13日にはニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官も独自にマンハッタンの連邦地方裁判所に提訴したと発表した。訴状で「公衆衛生を危険にさらすだけでなく、毎年ニューヨークで勉強する10万人を超える留学生の移民状態を脅かす」としている。

 同日にはニュージャージーやコネチカットなど17の州とワシントンDCも同様の提訴に踏み切った。民主党が主導した取り組みで、取りまとめをしているマサチューセッツ州のマウラ・ヒーリー司法長官は提訴発表の声明のなかで「トランプ政権は、この無意味な規則の根拠を説明しようとさえしなかった」と非難した。17州とDCには2019年時点で37万3千人の留学生が在籍している。イェール大、ラトガース大、メリーランド州立大など約40の高等教育機関がこの訴訟を支持するとの声明を出していた。

 トランプ大統領は「もし再開しないなら、(教育)予算を打ち切るかも知れない!」と8日にはツイートするなど対面授業の早期再開を強く求めていたが、撤回に追い込まれた。11月の大統領選挙に向けて経済回復や学校の正常化をアピールしたいと見られ、慎重姿勢の民主党と対立している状態だ。

 米国の大学には2019年時点で約110万人の留学生が在籍。提訴したハーバード大で10%、MITで12%を留学生が占める。新規制が施行されれば留学生の激減は避けられず、多くの大学で収入が大幅に減少するには必至だ。なお留学生の3分の1強の約37万人は中国人が占めている。発表から1週間、翻弄された国内外の大学、留学生に安堵が広がった。