弱点は武器になる

ダンサー 西岡 翼さん(26)

拍手に呑み込まれる感動
ダンスで生きる人生決意

 ダンサーの西岡翼さん(26)は、日本でも特に歴史があり、国内外で活躍するダンサーを排出している埼玉全国舞踊コンクールで3位入賞や、海外でも有名なNBAバレエ団の公演にも出演したのち、ニューヨークへ活動の場を移した。現在、複数のカンパニーに所属してダンサー、振付家、指導者として活動している。

 「コロナウイルスの影響で世の中が一変し、アメリカでは差別問題で人々が荒れて大変な時期だからこそ、精神を落ちつかせ、癒してくれる芸術が必要だ」と思っている。そんな思いで、活動を続けている日本人ダンサーがいることを知って欲しいと編集部に連絡してきた。

 大阪生まれ、千葉育ち。小さい時から踊るのが好きで、小学校1年の時に妹のバレエ教室を見学して魅了された。市川市の大杉芸術学園でバレエを初め、その後、アトリエドゥバレエフェリに移る。有明教育芸術短期大学芸術教養学科舞踊コース卒業、山田あつこ、清水フミヒトに師事した。

 身長157センチと小柄だ。日本のバレエの世界で生きて行くには身長が足りなかった。自分を表現できる場所がどこなのか。迷っていた学生時代、ニューヨークのアルビン・エイリー・ダンスカンパニーのサマースクールを恩師の清水が勧めた。怖くて興味もなかったが、大学を出て社会人になる時に踊りの世界に進むことを決め、受験した。高校の時から名前だけは知っていたので合格通知が来た時は嬉しかった。そこで黒人の身体能力、バネの凄さを見て、身長が低い事はこのアメリカで武器になることを知った。一旦帰国して1年間準備を進めてスカラシップを取って再渡米。一番思い出に残っている作品ロバート・バトルの「バトルフィールド」をリンカーンセンターで踊った時。客席が4階まで迫り、拍手に呑み込まれるというということを実感した。

 いつか自分のカンパニーを持ってやりたかった作品をどんどん発表していきたい。色々アイディアを書き留めたノートがある。それを全て作品にできたらと思うと心も踊る。コンテンポラリーダンス、モダンダンスの聖地ジョイス・シアターの舞台にいつか立つことを夢見て。唯一無二なキャラクターでステージで存在感のあるダンサーになりたいし、ミュージカルも大好きでいつか挑戦したい。自分のウイークポイントは武器になることがあることを伝えたい。絶対にチャンスはあるんだと。それは自分に言い聞かせてきた言葉でもある。(三浦良一記者、写真・本人提供)