7月20日英国のスターマー首相に代わり、バーナム首相が誕生しました。10年間で7人の首相の平均任期は約1・7年です。日本の戦後首相の平均任期約2・2年は世界の最短命首相と言われます。しかし短命である理由は大きく異なります。
一、英国では与党議員が支持を変えての首相交代が多いのです。4月の地方選挙で、与党労働党が改革党に大敗したことが発端です。次に、マンチェスター市長のバーナム氏が6月の補欠選挙で改革党に圧勝して「改革党に勝てる首相」と映り雪崩現象が起きました。
日本の与党議員は、首相の人気が下落しても公認権や人事の縛りなどで首相交代を言えません。英国の議員は有権者の意見を尊重して首相を選びますが、それには以下の前提があります。①候補者の公認は、選挙区の党員投票で決定する。②選挙区内の有権者の個人相談が第一の職務である。
二、英国の政治家には、法的決着以前に政治的・倫理的責任を取る風土があります。次期首相の可能性もある改革党のファラージ党首が7月に議員辞職して、彼への信任を問う補欠選挙に出馬します。資産家からの違法な住宅提供との報道への切り返し策です。
英国では議会常任特別委員会、国家監査院、メディアなどが調査を行います。閣僚辞任後も調査は続くため、コロナ禍での飲食会出席で辞任したジョンソン首相は、更なる事案の発覚で議員辞職に至りました。
日本の国会では、高市早苗首相の米国時の肩書や中傷動画対応に関して、関係者招致や資料提出を巡る対立が起きました。米国や英国の議会は証人喚問や文書の提出権限を有するのに対し、日本の国会は有しないのです。
日英間のより大きな違いは、英国では首相が交代しても議会を解散しないことです。2024年の総選挙で大勝した労働党の公約を継承する限り、首相が交代しても政権の正統性は変わらないとの認識です。日本では、首相が頻繁に解散を行ってきました。「英国の首相は自由な解散権をもつ」という学説が根拠ですが、英国の首相が解散権を多用しないことが明白です。トランプ大統領は、議会の承認を得ずに対イラン戦争を開始し、閣僚や最高裁判事などを罷免しましたが、議会だけは解散できません。その大統領以上の権力を日本の首相が行使しているのです。
激動の世界で各国首脳との緊密な連携を要する今、日英両国首相の任期拡大は世界全体に必要です。
ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー。慶大卒。国際ICや難民を助ける会等の民間外交活動を経て国会議員、民主党国際局長、財務副大臣等を歴任。現在、国際IC日本協会理事、岐阜女子大特別客員教授、東アジア共同体研究所特別研究員。英国在。

