編集後記
編集後記
みなさん、こんにちは。ニューヨークの市長選挙は投開票され、急進左派のニューヨーク州下院議員の民主党候補ゾーラン・マムダニ氏(34)が初当選しました。インド系移民でアフリカ東部のウガンダ生まれのマムダニ氏は、家賃値上げの凍結や市営スーパーの導入といった生活コスト低減政策を掲げ、物価上昇に苦しむ若年層を中心に支持を集めたと言われています。昨年までは無名で、7年前に米国市民権を取得したばかりの若干30代の元外国人の若者が、全米最大都市ニューヨークの市長に選出されたことは歴史的快挙といえますが、前途は多難なスタートになるかもしれません。
英紙「デイリー・メール」が投開票前日の11月3日付で、マムダニ氏がニューヨーク市の次期市長に当選した場合、同市から少なくとも約76万5000人、最大で約200万人規模の市民が流出を「検討」または「確実に移住する」という世論調査の結果を報じました。マムダニ氏を批判しているニューヨークポストは同日、さっそくこれを紹介しています(本紙今週号4面に記事)。
それによると市民の9%が「確実に市を出る」と回答し、さらに25%が「離れる事を検討している」と答えており、合計でおよそ34%が離脱・市外への移住の可能性を示したのです。同市の人口は約850万人で、34%は約290万人に相当します。特に高所得者層の流出危機も指摘されており、年間所得25万ドル超の回答者のうち7%が「確実に離れる」と回答。ニューヨーク市では上位1%の所得層が市税収の半分近くを担っているとの指摘があり、彼らの大量流出が現実のものとなれば、市財政への打撃は深刻です。
これに加え、マムダニ氏を「100%共産主義の狂人(Lunatic)」などと批判してきたトランプ大統領は2日、CBSの報道番組「60ミニッツ」で、マムダニ氏が市長になれば、「大統領としてニューヨークに多額の資金を提供するのは難しくなるだろう」と語り、「共産主義者がニューヨークを統治すれば、そこに送るお金が無駄になるだけだ」と付け加え、当選発表後には、自身のSNS(Truth Social)に「…AND SO IT BEGINS!」と投稿しました。
全米最大都市とはいえ、地方自治体の長の選挙で、大統領が自分の党推薦候補の応援演説をするのはいいでしょうけど、逆に対立候補や気に入らない候補に投票したり当選させたりしたら、国(連邦政府)が有権者や市政に懲罰的な報復を示唆するというのは、やりすぎのようにも見えるのですが、そんなことが許されてまかり通るというのも、議会制民主主義とはいえ、大統領という王様のなせる業と言えるのでしょうか。大統領令って自分で勝手に決められるんですからね。
普通は、このような政治・社会環境の中では、報復や受難を恐れて、今回のような弱い立場の群衆の代表みたいな人が当選してしまうということは政権基盤の脆弱な国でもない限りあり得ないでしょうが、それがこの米国最大の大都会のしかも、全米最大の富裕層が集中する街の市長に選ばれてしまうところに、ある意味、アメリカ人の「やってみなければわからんでしょ」と実際に自分たちの身を切ってリスクを取って理想のままに進んでみるということを体現できるというのが、まだまだアメリカという国のポテンシャルを逆に感じました。トランプ大統領の圧力と富裕層を敵に回してどうやって弱い立場の人々が自分達の未来を切り開いていくのか、トランプ劇場に新たな一幕が加わり、新人の脇役が登場、果ては主役を食うかの見ものです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)
