その17:ミズーリの街でマイナーリーグを応援

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」 をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは! 日本列島は7月最終週より順次梅雨明けとなり、酷暑の様相を呈してきました。もちろん東京も、Go Toキャンペーンのように「対象外」とはならず、しっかり35度近い毎日。熱中症に注意を!というフレーズをあちらこちらで耳にします。そんな夏真っ盛りですが、日本はもとより今年の夏は世界中でいつもとは異なる姿を見せています。とにかく旅行に制限や規制のかかる2020年は筆者の働くホテル業界もジリ貧の世界。明日をどう乗り切る、が業界の合言葉になるほど大変な時代を迎えました。このコラムもここ数か月コロナ禍の楽しくない話題ばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいなので、今月は筆者の愛する野球の話を少ししたいと思います。

 今月の「魅惑の旧街道を行くシリーズ」シーズン③ 第17話は、筆者が2年間一生懸命応援したミズーリ州ジョプリンにあるマイナー・リーグのお話です。

 野球と言えば先日MLBがついにシーズン入りしました。変則の1チーム60試合という短期決戦シーズンですが、ファンとしては無いよりマシ。スタジアムで実際に応援することは難しいですが、放映はされますし、スタジアムにはまる観客がいるかのようなCG効果も施され、この時代ならではという感じです。

 日本では日本人メジャーリーガーの試合が優先放映されるので、必ずしも筆者が観たい試合は少ないのですがそこは我慢。MLBTVをサブスクリプションしているので、そちらと併用して楽しんでいます。

 そのMLBの今年の目玉の一つだったのが、昨年9月に投稿した「フィールド・オブ・ドリームス」の試合です。(詳細は週刊NY生活バックナンバーでご確認ください)が、やはりコロナ禍の影響で中止が決まってしまいました。かなり直前のお知らせなのでチケットを持っていた人たちは大変と思いますが、2021年にスライドされることとなりました。今年はセントルイス・カージナルスとシカゴ・ホワイトソックスの試合予定でしたが、来年はどうなるのでしょうか。

 中々話はルート66に行きませんが、メジャーの野球と同じく筆者はマイナーリーグも好きです。野球が「American Pastime」と呼ばれる所以はむしろマイナーリーグにあると筆者は思っています。マイナーリーグと出会ったのが2001年。ジョージア州サヴァンナでした。たまたま旅行で訪れた街で試合観戦をすることになったことがきっかけでドハマりに。数百人程度しか入らないスタジアムに家族そろっての応援。一言で言えば「心地よい」のです。選手は粗削りで成長過程ですが、いつか大きな舞台でやってやるという気概に溢れていて、初めて肌で野球の楽しさを感じたことを憶えています。

 そんなマイナーリーグ・ベースボールが我がルート66にやってきたのが2015年、ミズーリ州ジョプリンの街、マイナーと言っても「独立リーグAA」に所属したブラスターズです。この街はルート66の中でも最も好きな街の一つなので応援しない理由はありません。シーズン期間はメジャーのそれよりかなり短めですが、機会があるごとに駆け付けました。この紙面では写真で一つ一つご紹介できないのが心残りですが、街のダウンタウン内につくられたスタジアムは柵があるものの、試合がない日の出入りは比較的自由。グラウンドを歩き回ったり、芝刈り担当のお兄ちゃんと雑談できたり、さらにはダッグアウトに実際座ってくつろぐことも出来ちゃいます。この瞬間が自分にとっての「フィールド・オブ・ドリームス」と言わんばかりに試合があっても無くてもエンジョイできるこの環境は素晴らしいと勝手に絶賛しているわけです。

 2015年の初シーズン、ブラスターズは55勝45敗の勝ち越しで終わりましたが、プレイオフのチャンスは逃してしまいました。そして翌年の16年は36勝64敗と大幅に勝ち星を減らしてしまい財政困難に陥った結果スタジアム使用の費用も払えなくなり、球団と街との関係性も上手くいかず、わずか2年でブラスターズの冒険は終わってしまいました。

 マイナーリーグには常にこのお金に関わる問題は存在します。試合を観に行かれた経験を持つ読者の方は分かると思いますが、とにかくチケットが安い。ある意味それは魅力の一つなのですが、球団運営を考えたときにはやはりネックになる問題点の一つなわけです。ジャージもメジャーのチームであれば例えそれがレプリカであっても少なくとも100ドルはしますが、マイナーの場合は40ドル程度。それを意外と高いと思う方もいらっしゃるかもしれませんがファンからすれば破格なわけで。筆者はホーム用とアウェイ用、両方のジャージを今でももちろん大切に持っています(笑)。

 そんなブラスターズですが、2018年にサウスウェスト独立リーグに「ジョプリン・マイナーズ」として参加するニュースが流れました。チーム名のマイナーはマイナー・リーグのそれではなく、鉱山労働者のマイナーです。ジョプリンは元々鉱山が沢山あり街の主要財源だったのでそこからチーム名を取っていますが、実は1902年の球団創立という歴史を持つクラブで、後にヤンキースで大活躍した名手、ミッキー・マントル氏もこのチームでプレイしたのです。そのニュース以後、まだ活動は制限されているようですが、近い将来ジョプリンでまた声援を送れる日が待ち遠しい今日この頃です。それではまた来月お目にかかります!

(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表)