米国の分断深まる
14日トランプ米政権による陸軍創設250年を記念する軍事パレードが首都ワシントンで行われた。お祝いムードの一方、全米各地では「ノー・キングス(王様はいらない)」と題する大規模な抗議デモが行われ、「米国は軍事独裁国家ではない」などと訴えた。スローガンの由来は、今年2月、ニューヨーク市で1月から導入された「渋滞税」の承認を取り消したと発表した際に、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに「渋滞税は死んだ。マンハッタンとニューヨークすべてが救われた。王様万歳!」と投稿し、ホワイトハウスもニューヨークの摩天楼を背景に王冠をかぶるトランプ氏のイラストを投稿したことからきている。
主催者側によれば、全米2100カ所で5百万人以上が参加、トランプ大統領が今年1月に再選されて以来、最大規模の抗議行動となった。ニューヨーク市ではおよそ5万人が、また不法移民取り締まりへの抗議行動が続いているロサンゼルス市では3万人が参加した。
NYでデモ参加者86人拘束
連続の抗議集会で警備強化

今月10日には、ニューヨーク市ダウンタウン市庁舎街の連邦合同庁舎ビル前で移民・関税執行局(ICE)の強制逮捕に抗議するデモ活動が夜遅くまで続き、この日だけで警察に抵抗した市民86人が手錠をかけられて連行された。そのうち52人が刑事裁判の召喚状を交付され、34人は暴行や公務執行妨害などの容疑で起訴された。同日午後5時ごろ、フォリー・スクエアには数千人が集まり、トランプ政権の移民政策に反対するニューヨーク市民の2日連続の集会が始まった。マスクや顔覆いを着用したデモ参加者は、手にはプラカードを持ち、怒りの声を上げながら集まりICEが撤退するよう要求した。
ブルックリン選出の市議会議員アレクサ・アビレス氏は、群衆に向かって「立ち上がれ。隣人と共に立ち上がり組織化して闘う必要がある」と呼びかけた。市民たちが「誘拐」と抗議するICEの取り締まり行為
により依然として拘束されている市民の解放を要求して一部が警察官と衝突。参加者は手錠をかけられたまま引きずり出された。デモ参加者が物を投げ始めたため、警察隊はペッパースプレーで応酬し、デモ参加者を鎮圧した。14日の抗議デモ集会でもNYPD警察官が動員されたが、この日は大きな混乱は見られなかった。
米陸軍が軍事パレード
34年ぶり、大統領誕生日と重なる

ワシントンでの軍事パレード開催は1991年6月にジョージ・H・W・ブッシュ大統領(当時)が開催した湾岸戦争勝利のパレード以来で34年振りだった。
米陸軍は1775年6月14日、米国独立戦争のため英国軍に対抗するため作られた大陸軍が起源。パレードは、独立戦争から始まり、主要な紛争も含めた250年にわたる陸軍の戦争の歴史が紹介される形を取った。兵士約6700人がマーチングバンドと共にそれぞれの戦争当時の軍服を着て行進。また軍事力を誇示するかのように、米国が誇る戦車M1A1エイブラムスなど数十台の戦車や歩兵戦闘車ブラッドレー、装甲車ストライカー、榴弾(りゅうだん)砲などの最新の軍用車両数十台が行進。このほか最新鋭のドローン、さらに戦闘機50機などが披露された。
税金無駄使いの批判も
トランプ大統領は「他の国々は勝利を祝っている。米国もそろそろ祝うべき時だ」と述べて、意義を強調していた。トランプ氏は陸軍創設記念日生まれで、79歳の誕生日と重なったことからパレード会場で盛大な歓迎を受けた。国家元首に対する21発の礼砲が始まると大勢の観客が「ハッピーバースデー」と歌い始め、予定はされていなかったが一時、誕生会のようになった。トランプ氏は「最も偉大で、最も激しく、最も勇敢な戦闘部隊」と陸軍を称賛、立ち上がって敬礼し、パレードを見守った。
費用は、陸軍によると2500万ドル(約36億円)以上で、戦車などによる道路損壊に対する補修費1600万ドル(約23億円)を含めると最大で4500万ドル(約65億円)ほどになるとされる。このため市民の間だけでなく連邦議会でも税金の無駄使いとの声があった。パレード開始前の14日未明、ミネソタ州ではメリッサ・ホートマン下院議員とその夫が銃撃され死亡する事件起きた。ジョン・ホフマン上院議員と妻も自宅で銃撃され、負傷した。ホートマン下院議員とホフマン上院議員はミネソタ民主農民労働党に所属している。逮捕されたバンス・ボールター容疑者(57)の車からは約70人の標的リストが見つかった。ミネソタ州のウォルズ知事は記者会見で「政治的動機による暗殺とみられる」との見方を示した。